ふじこ

ドローン・オブ・ウォーのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ドローン・オブ・ウォー(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

荒野の基地に置かれたコンテナ、"ここより合衆国を離れる"と張り紙のされたその中で無人の戦闘機を操り、遥か遠く離れた国のテロリストへ爆撃の指示を出す。
一瞬で爆散するテロリスト達。操縦桿から手を離し、別の軍人と交代して基地を出る。
車に乗り高速を走ると、すぐに都市部へと入る。
空軍少佐のトミー・イーガンは無人攻撃機を操るパイロットだった。現代の戦争を描く1本。


以前は有人戦闘機に乗る優秀なパイロットだったトミーは国内の無人戦闘機に配置転換され、上司である中佐は他のゲームセンターでリクルートされた新兵達にゲームではなく戦争であり、人を殺している という現実を教え込むものの実際の戦闘機に乗っていたトミーにとっては現実感がないのかと思った。中佐にまた実機に乗せてくださいと頼むものの、まぁ考えとく…みたいに流されちゃう。
"燃え尽き症候群"にはしたくないなぁ、皆と違って彼だけは本当にアフガン上空を飛んでいる と上司の評価は高い。

安全圏から無関係な一般市民もはっきり見える中で自分の手で爆撃する…って、どういう気持ちなんだろう。
CIAからの協力要請で確実に無関係の人も巻き込まれて死ぬと理解しながら攻撃を繰り返して、トミーの精神はどんどん擦り減ってしまう。
でもトミーの同僚は全然気にしてない。むしろテロリストを先制攻撃する事で国を守っていると。上司の中佐も一般市民が巻き込まれる事に関しては若干の抵抗を見せるけれども、CIAからの命令には従う。割り切っているんだと思う。
トミーの奥さんもこう…なぁ、別の人だったら違った展開になってたのかな…。でも子供も居るからな…うーん。

自分で飛んでいたときよりもハッキリ見える人間を、飛んでいた時よりも容易に殺す事が出来る。
前線に出る兵士よりも遠くから敵を殺傷する狙撃兵はより恨まれると何かで見たけれど、じゃあ彼らはなんなんだろう。目に見える事のない高高度から、1万2000キロ離れた場所でスイッチを押す兵士は。途中、前線の兵士たちからは軽んじられている風な事を中佐が言ってたけど、でも前線で命の危機と隣り合わせの兵士たちが休息を得るのに上空からずっと監視して安全を確保してやれる。でも前線の兵士たちが地雷みたいなのを踏んで吹き飛んで死ぬのをモニターで見ている事しか出来ない。
自分が吹き飛ばした人間を弔いに集まった一般市民ごと、また爆撃をする。

絶対に死なない戦争についての是非をなんと言って良いのか分からない。
命に釣り合わない、と思うけれど、命に釣り合うものって何だろう。
命には命でしか釣り合わない、のだとしても、誰にそれを言う権利があるんだろう。わたしには絶対にない。
そもそも命に釣り合いなんて取れるのかって考えると、それはないなとも思う。
でも正しいとは思わないし、じゃあ正しい戦争って何なの…?
中佐だって、この攻撃を止めたとしても相手はテロを止めないだろう って言ってたし、そうだと思う。
このなんとも言い様のないモヤモヤした気持ちを毎日毎日感じて、感じていたとしてもスイッチを押す。
頭がおかしくなっちゃいそう。
これなら中佐が戦場に出たことのない兵士に言う、"殺してる相手も人間だ"なんて思わない方が良いんじゃないの…?
って、思うんだけど、じゃあそんなゲーム感覚で?って気持ちにもなる。
なんだろうなぁ…店員さんに態度の悪いヤツ大体接客経験ナシ、みたいな……実際の感覚を知らずに?

なんというか、"適正"が大事な仕事だなって。トミーの同僚みたいな考えの人だけが長くやれるんじゃないだろうか。
わたしには出来ないかな…。絶対に戦争に関わってください って言われたら、弾薬製造工場で働くかな…。
でもそれでも、わたしの造った弾はちゃんと飛んだ?わたしの造った弾は人を殺した?って、気になってしまう気がするなぁ…。これがレーション工場だったとしても何かを考えてしまいそう。
心の強い弱いじゃなくて、ほんとにただ"適正"の話なんじゃないかと思う。

トミーは全部を捨てて、また飛ぶ希望も諦めて奥さんの元へ向かったけれど、いい仕事が見つかると良いな…。
まずは軍事裁判かも知れないけど…。
ふじこ

ふじこ