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ドローン・オブ・ウォーのbigbamboo0815のネタバレレビュー・内容・結末

ドローン・オブ・ウォー(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画はいま現在の最新の戦争の姿を描いている。
本来“雄ミツバチ”を意味するドローンは、
転じて“遠隔操縦の飛行物体”を指す。
日本でも最近ニュースで話題になったけど、
首相官邸の屋上に落下したとか、
姫路城の大天守に衝突して傷を付けた、
なんてのは小型のラジコン・ヘリみたいなもんで、
この映画に出てくるドローンは端的に言えば、
もっと大きな無人のステルス戦闘機だ。

攻撃型ドローンを敵国上空で飛ばし、
衛星回線で遠隔操作する側は
遠く1万2千キロ離れたアメリカにある
空軍基地のエアコンの効いた室内にいる。
座ってモニター画面を見ながら
クリックひとつでお手軽に
ミサイルを発射して爆破。
テロ組織の幹部と思しき人物を逃さぬよう
偶然その近くに居合わせた人たちも含めて一掃する。
ドローンは上空3千メートルを飛んでおり、
敵側から視認することはできない。
攻撃を仕掛ける側は無人なので、
反撃されて死ぬリスクもない。

ある意味では効率の良い理想的な戦い方
ではある、と思うけれども、
それがアンフェアかと問われれば、
必ずしもそうとも言い切れない気がする。
既に第一次大戦中から考えられていた戦闘方法だ。
そもそもフェアな戦争なんてありえないのだろう。
もう戦争はここまで進化してしまっているのだ。
これは戦争というより、もはやゲームだ。

映画の原題は『Good Kill』。
アンドリュー・ニコル監督は
自ら米国ラスベガスに出向いて
ネリス空軍基地を綿密に取材したという。
空軍に撮影カメラを入れたドキュメンタリーや
軍関係者に対するインタヴューを撮るのは
軍事機密との関係で困難なのだろう。
ノンフィクション的手法を採らずに
役者に演じさせる形にすることで
戦争に直接関与する者の心理を
よりリアルに描写しようとしている。
民間人を巻き添えに殺傷しているうちに
生真面目な柳沢慎吾のような主人公は
次第にその心を蝕まれてゆく。

新しい戦争の形を描いた新たな戦争映画
ではあるけれど、それもまた、
新たな兵器が開発されれば
すぐに上書きされて
過去のものになってしまうのだろうか。
戦闘で死傷者を出さないような戦争を
双方が突き詰めて行ったとしたら、
最終的に行きつく先は、
「サイバー戦争」になるのではないか。
そうなったら、また新たな形の戦争映画が
作られることになるのかもしれない。

上映後に田原総一朗さんと森本敏さんのトークイベント。
映画の内容のお話から安保法制の話題に至るまで、
とても勉強になって、ものすごく面白かった。


2015/09/15 Filmarks試写会@早稲田大学大隈記念講堂小講堂
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