主人公のトリシャ･エチャバリアは、
男性として生まれたトランスジェンダー。
息子がゲイであることを赦せない父親に
勘当されて家族を失ったトリシャは、
ミスコンに出場して賞金稼ぎをしながら、
身寄りのない娘を引き取って育て上げてきた。
そして、遂に念願のミスコン女王に
輝いた途端に突然死してしまう。
もし自分が死んだときには、
葬儀まで7日間の通夜の間に毎日日替わりで
海外セレブみたいな美しい死化粧を施して葬ってほしい、
と生前に彼女が語っていたことから、
トランスジェンダーの親友バーブスは、
トリシャのその最後の願いを
叶えてあげようとする。
主人公の死をきっかけにして、
彼女の人生が紐解かれていくのだけれど、
劇中のエピソードが時系列順に並んでいないので、
しばらくはパズルのようで少し戸惑うが、
頭が落ち着いてくるとそれも一興。
試写会のあとのトークイベントで
プロデューサーが語ったところによると、
葬儀の席で故人の思い出を語るときには、
あんなこともあった、こんなこともあった、
というふうに決して時系列で語られないので、
この映画もそういう作りになっているとのこと。
そうやって語られるトリシャの人生は、
トランスジェンダーとしての哀しみと、
女性としての歓びに溢れていて、
シリアスだがユーモラス、
悲劇的ではあるが華やかで、
その絶妙なバランスの加減こそが、
この映画を単なるLGBTものにとどめることなく、
性別で区別しない人間の悲喜こもごもの人生そのものを
色鮮やかに描き出した作品に昇華している。
死によっても終わることのない、
何とも言えない余韻が
じんわりと胸に残る。
2017/07/05 Filmarks試写会 ＠なかのZERO小ホール
