半兵衛

御用牙 かみそり半蔵地獄責めの半兵衛のレビュー・感想・評価

4.3
まだまだ勢いのある勝新と、増村保造をはじめとする大映スタッフによる娯楽映画の傑作。増村監督は自我のある女性映画が活躍する作品を手掛けることが多いが、一方で勝新や田宮二郎、市川雷蔵といった大映の男優スターの個性を生かした作品も手掛けており本作は自分の主義主張は控えめにしてあくまで勝新のワンマン時代劇(といっても勝新本人の監督作品に比べるとちゃんとまとまっている)として成立させている。ただし増村監督が好きな血の描写は沢山出てきて、特にSMシーンで肌から痛々しく血が吹き出るリアルな場面にに異様な拘りを感じずにはいられない。

この作品は増村監督が脚本も担当しているが、小さな事件をきっかけに様々な悪の存在が露呈して最終的に大悪党の存在にたどり着くというドラマを小気味良く描いており、殺陣やお色気といった見せ場もきちんと押さえている手堅さにも唸らされる。

また本作は時代劇によく見られる「悪党にいじめられる弱者」という場面が存在せず、弱者がいたぶられる様子は省かれ勝新演じる同心・かみそり半蔵が小さな証拠から悪党の存在を嗅ぎ付け彼らをいたぶり情報を吐かせるのがポイント。これによりまどろっこしさが無くなり、悪人がやられる痛快さがアップしている。それにエロ場面も悪人に協力している女性をいたぶっているので心が痛まないしね。

女性が拷問されている場面はかみそり半蔵による立派なイチモツが使用され、よくよく考えると網の中でグルグル回されてその下からあれを突きまくるって本当に気持ちいいのかと思えるけれど大映で活躍した一流スタッフの技術により気持ち良さそうな男性的エロ場面になっているのが凄いの一言。まあ原作が男性向けだし、仕様がないよね。

日本を代表するカメラマン・宮川一夫の画作りも見事で、狭い画面が大好きな増村監督の嗜好によりあまり奥行きを感じるショットは無いが後半狭い小屋での死闘や黒沢年雄演じる腕利きの用心棒との狭い橋での対決場面(川の水面が風で揺れる様の芸術的なエモさ!)などで超一流のテクニックが存分に発揮されている。

いかにも小池漫画のキャラな主人公を気持ちよく演じる勝新や、その取り巻きで軽妙なやり取りを披露して随所で笑わせる蟹江敬三と草野大悟、勝新の上司でいかにも小物然とした西村晃のコミカルな演技、極悪非道な盗賊を清々しく演じる佐藤慶が楽しませるが、個人的には本作のMVPは競り落とした女性を鞭でいたぶるも、それを半蔵に見つかりひどい目に合う変態野郎を熱演する初代ムーミンパパの高木功と、本当に頭を剃って尼僧を演じちゃんと裸になって勝新にいたぶられる相川圭子。

ちなみにDVDにはスチールギャラリーが付属しているが、勝新や西村晃、増村監督や宮川一夫などといったスタッフによる撮影裏の貴重な風景も見られてお得な気分に。
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