あき

予告犯のあきのレビュー・感想・評価

予告犯(2015年製作の映画)
3.5
 社会は弱者を助けてはくれない。どれだけ困窮しようと苦しもうと、そんなのは自己責任だと言わんばかりに冷たい目を向け、「努力しろよ。」と突き放す。
 ゲイツはパワハラによって鬱病になり、派遣を打ち切られた。なんとか社会復帰しようとしたが、どこの会社も彼を受け入れてはくれない。挙げ句の果てに蛸部屋に連れて行かれる。一度レールから外れてしまえばそこに戻ることは許されない。そんな社会の理不尽さを知っていたからこそ、彼は言う「頑張れるだけ幸せだったんですよ、あなたは。」と
 戸田恵梨香演じる刑事は彼の対になる存在。彼女は小学生の時代にいじめに遭うという辛い過去を抱えながら、東大卒の刑事になった。彼女にしてみれば努力さえすれば誰だって這い上がれるのだ。だから彼女はゲイツに向かって「あんたみたいなやつ、私は絶対認めない。全部社会のせいにして。ネット上で神様気分に浸ってんじゃないわよ!」と
 今所謂「上」にいる人間のほとんどはある程度の努力をしてきた人だろう。だからほとんどの人が努力をしろと口を揃えて言う。まるでそれが模範解答かのように。しかしもう少しよく考えてみれば努力をするのにも環境がいること、そして必要な努力の程度が人によって大きく異なること。失敗の原因の全てが努力不足というわけではないことを見落としてるのかもしれない。


 これはおまけだが、戸田恵梨香演じる女刑事と田中圭演じる男刑事の関係性が結局よくわからなかった。何か匂わせるならそこの詳細も欲しい。
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