紅孔雀

ストックホルムでワルツをの紅孔雀のレビュー・感想・評価

ストックホルムでワルツを(2013年製作の映画)
4.9
殆んど“奇跡”と言うべき傑作。主演のエッダ・マグナソンが、実在のモニカ・ゼタールンドそっくりのクール・ビューティで、かつ歌も素晴らしい。こんな女優、よくぞ探し出したものよ。
男遍歴、酒とタバコの日々、そして自殺未遂。そんなモニカが、ビル・エヴァンスとの共演を果たすサクセスストーリーであります。ご都合主義と言うなかれ。だって実話なんですから。
絶望の淵で、ビル・エヴァンスに自らの歌のデモテープを送るところに唐突感があるのですが、実はこれこそが本作の肝。「木のてっぺんに登ること」(これ、モニカの父が娘の無軌道ぶりを非難する時の言葉デス)を運命付けられた才能は、こうした凡人には理解しがたい衝動に駆られるのではないでしょうか。太宰治の言う「選ばれてあることの恍惚と不安」がモニカにもあったと思うのです。
そしてトミー・フラナガン、エラ・フィッツジェラルドといったジャズ・ジャイアンツたちがさりげなく登場するのも嬉しい。画面も綺麗、娘役も健気、インテリアもシック。そして、マイケル・ファスベンダー似のベーシストの演技も渋くて良かった。ジャズ映画としては、オールタイムベストと言ってもいいかも。
紅孔雀

紅孔雀