『キックアス』のマシュー・ボーン監督といえばキレキレのアクションと音楽とアクションのセンスのいい組み合わせが得意なことが知られている。
スパイ映画となっている今作。英国紳士の代表的存在のコリン・ファースがキレキレのアクションをみせるのだから面白くないわけがない。
アクションといえば大抵ワイルドで泥臭い(それがいいってのもある)イメージがあるが、革ジャンでもパワードスーツでもなく英国紳士のアイデンティティでもあるスーツを纏って戦う姿、そしてそのスーツ、ガジェットに備わった男心をくすぐる武器の数々。一人前の男が憧れるイギリスのサヴィル・ロウの一角にあるテーラーの試着室からつながるスパイのアジト。キングスマン選抜試験もそうだが、『ハリー・ポッター』での仕掛け扉を開けた時のような高揚感を感じる。私はこういう昔のスパイ映画をオマージュしたようなコテコテのスパイ演出に弱いのでハマった。スパイはいかなるときもスマートであり、マティーニを飲むんだ。あとは女性とのお色気シーンが欲しかったなって思ったけどそうなったら007と一緒か。
相変わらず映画でまくってる敵役のサミュエル・L・ジャクソンもいい。敵役といっても環境について考えた極論で人間を減らすという結果に至り、彼自身は血を見ただけでゲロ吐いてしまうほど(本当に吐くから笑えた)といういわゆる悪役とは違った存在なのも面白い。サミュエルが画面に登場する度にキャップが変わってるのも気が利いてて分かりやすくスーツとの対比となっていていい。マイケル・ケインの使われ方が偲ばれないのとキングスマンがそんなに登場していないのにもかかわらず世界規模にまで物語は膨らみ、3人(ロキシーはミサイルのみだからほぼ2人)で解決してしまう強引さは苦笑いだったけど(笑)。
タロン・エガートンも最初はパッとしないかなと思っていたらスーツでビシッとキメてからのかっこよさにはやられた。
教会のシーンのキリスト教原理主義者たちをぶち殺していくコリン・ファースのイカれっぷり。ポップな大花火大会や広げた大風呂敷を力強く収束させていくラストにかけてはまさにお祭り。あの音楽乗せてむちゃくちゃやってる爽快感はたまらない。
マシュー・ボーン監督のセンスが光る作品。