える

ゴジラ キング・オブ・モンスターズのえるのレビュー・感想・評価

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僕はこれを他の映画と同列に点数をつけて評価することができない。(もちろん悪い意味で)
アメリカ人の核兵器への認識ってそんなもんなんだな、と改めて感じた。

そもそもゴジラとは、1954年の第五福竜丸が被害に遭ったアメリカの水爆実験が下敷きになっているはず。つまりゴジラはそれ自身が核兵器に対するアンチテーゼで、核兵器に対する怒りや憎しみの権化なのである。地球上に2発も原子爆弾を落としておいて、結果どうなるかわかった上で、何も学ばず、より高威力の核兵器を作り続ける愚かな人間に勝手に覚醒させられたゴジラも被害者なのである。

本作でゴジラがどう描かれていたか。あるシーンを除き、途中まではハリウッド版の怪獣映画として楽しんでいたが、どうしても僕の許容量を超える演出がこの映画を駄作と評さざるを得なくしてしまった。それは、人間の兵器で弱ってしまったゴジラに、日本人の博士が核弾頭を持って喝を入れに行く(劇中表現そのまま)シーンである。何をどう解釈したら核兵器の被害者であるゴジラを核弾頭で元気にさせる、なんて演出を思いつくのか。しかも地球上で唯一の被爆国である日本人に自己犠牲の精神で実行させ、本人もろとも爆発させる。結果ゴジラは元気になって再びアメリカの街を守り、各地で暴れていた怪獣を治めるのであった。俺達日本に原爆落としたけど、その威力を日本が身を持って示したおかげで、核の抑止力で世界に平和が訪れたよ、やったじゃん!最高にクールだったぜ!とでも言いたいのだろうか?あまりにも馬鹿げている。これは"ゴジラ"だけでなく世界中の核兵器を憎む人達への冒涜だ。

さらに後日談として、その命を賭して人類の安全を守ったゴジラの通った跡には続々と自然が戻ったという。広島に原爆が落とされた際、向こう50年はぺんぺん草も生えないだろうと言われていたという。そんな予測に反して広島が急速に復興したのは決して神のご加護でも自然の摂理でも、ましてや核兵器の被害が思ったより小さかったからでもない。当時の人の文字通り血と汗の結晶にほかならない。放射能の塊であるゴジラはそれを1Bqも体外に漏らさず、なぜか地上に豊穣をもたらし、厄介な怪獣達を統べる王で有り続けるが、人間様には絶対服従と…。あまりにゴジラがかわいそうすぎないか?アメリカお得意の主観的正義と、キリスト教特有の人間主義的思想が"ゴジラ"という存在と究極的にミスマッチしているとしか思えないのは僕が被爆地の出身だからという理由だけではあるまい。

この映画、平均評価3.8(5/30現在)なんだけど、昨今の日本人ってこういう演出見て何も思わないんだろうか。僕が過敏なだけだろうか。
敢えてゴジラとしてこの話を作る必要性が全くわからない。ハリウッドオリジナルの怪獣映画だったら上述の話全部チャラで観られたのに。話題性と監督の自己満足と金の匂いに最後まで犠牲になったゴジラがかわいそう。
える

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