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ゴジラ キング・オブ・モンスターズのJIZEのレビュー・感想・評価

4.1
巨大生物ムートーとの激闘で怪獣の存在が公となった五年後を舞台にキングギドラ,モスラ,ラドンなど神話時代の怪獣たちとゴジラが全世界の覇権をめぐって激突を繰り広げるモンスター・ヴァースシリーズの第3弾‼︎2D字幕で鑑賞。観る前と観た後で"ギドラ"に対する善と悪の印象がだいぶ変わったがゴジラ以上にほぼ主役級の役割を担い脚本を激しく振り回してくれた功績はMVP確定で他ならない。まず同ユニバースの前作『キングコング:髑髏島の巨人(2017年)』のエピローグで垣間見えた壁画の資料の布石からどうゴジラサイドの世界観へ地続きで連動するのか約2年間待ち侘びたが冒頭のモナーク管理下に置かれたモスラが孵化するくだりからボルテージは最高潮にあがった。またシリーズの起源作『GODZILLA ゴジラ(2014年)』にて映画のキーマンとなる渡辺謙演じる芹沢博士ほかモナークやゴジラ周りなどほぼメインの布陣チームを体制化させ関連性を踏襲させた状態で最新作へブっ込んだのは身内論や説明過多にならずスムーズな導入に思える。いわゆる作品のマクガフィンが怪獣と交信できる装置"オルカ"で全世界を滅亡させ兼ねない重要なその玉手箱をめぐって二転三転するシナリオは端的に超シンプルでほぼ怪獣同士の超自然的なアクション映画へ昇華させたのは見事な判断だと思う。逆に言えばコレ以外ない招集された怪獣同士が激突する王道のシナリオを忠実に調整して映像化にこぎつけた佳作と云える。映画を観た人なら一目瞭然のようほぼ二対二のチームバトル戦がメインで各々が自由勝手に建造物を破壊したり人類を襲うような暴れまくるハチャメチャ感をあえて描き込まなかったのも美点に類する。ゆいいつ終盤ギドラが標的を変更してヴェラ・ファーミガ演じるエマ一人を追いかけますくだりは絵的にだいぶ滑稽だったが…。本作は四大怪獣をメインに据えつつも自然破壊や犠牲を糧に利益を目論む人間たちに警鐘を鳴らすような社会性が濃い怪獣映画だ。

→総評(オールドフレンドへ託した勝利への希望)。
総じて本プロジェクト群の中では前二作で示したボーダーを軽々と飛び越え現時点では無類の最高傑作に思う。またモンスター・ヴァースのクロスオーバーがようやく意味を持つ次作の『Godzilla vs. Kong(2020年)』においても本編の中(特に終盤)で"髑髏島"や"コング"など期待が膨らむキーワードが幾つも登場しているコトからキャスト共々の合流や夢のドリームマッチが実現する興奮が尚更ある。個人的に本作のラストで示唆された"メカ〜"の登場も周到に布石が回収されるのであれば確実に盛り上がる布陣なのでアイツの登場を信者からすれば願わずにはいられない。ぶっちゃけ云えば序盤のモナーク南極基地でモンスターゼロが目覚める絶望感から絶体絶命で瀕死の状態に追い込まれる脱出劇のシークエンスがおれ的には本編の山場だった。ゴジラが水中でモナーク基地に暗闇から威嚇する場面の魅せかたもうまい。また終盤のゴジラvsギドラとラドンvsモスラひいては人間サイドの位置関係が一つの画角内で正確に示されている対構図はかなりの美点だった。ただ苦言は都合よくゴジラや援軍が登場したり死を免れるシーンが多々あるのもこの絶望的な状況下の中では到底あり得ないし犠牲者の描き込みが俄然生温いのは否めないだろう。いわばエモーショナルな胸を打つ描写が芹沢博士のある重大な終盤のくだりとモスラのあのシーン以外は少なかったのかと思う。怪獣同士の死闘をメインに置いているため人間サイドの浅はかさが滑稽に思えてしまい補完する要素以外の何物にも意味を成してなかったように感じる。ラッセル家の家族描写も長々と描いた割には冗長で後に残るものがあまりなく愛や絆以外に怪獣たちが目覚める主題と直接的にあまりリンクしてない。ラドンが思ったより出番薄かった感じやモブ怪獣たちの粗雑感,ギドラの万能感かつ最強感も何かスペックで提示できれば完璧だったかもしれない。なんだかんだ来年のプロジェクト第四弾で一旦の区切りが付きそうで固唾を呑んで公開を待ち望みたいと思う。近年の怪獣映画で"こういうのを観たかった"感は確実に補完できます。というよう世界規模で四大怪獣が王座をめぐって大激突する人類滅亡の最強の絶望シナリオを映画館でぜひお勧めです。
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