がく

フィフス・シーズン 春の来ない村のがくのレビュー・感想・評価

5.0
寂れた農村。ささやかな村中行事を村人みんなで楽しみ、新しい季節を迎える習わし。突然変異とも言える巡らない季節、自然の急変化による自給自足生活の終焉。まさしくディストピア。

美しい季節を知っているが故の哀しい季節の到来。抗いたいが具体的手段に乏しく、解決策に明るくない村民たちの取る行動に、人類の歴史とも言える罪のなすりつけ、自分さえ助かれば多少の犠牲はやむを得ない精神が見え、道徳や正義を貫けない弱い心を戒めるきっかけとなる。恐い怖い愚かな人間社会。

最初のカットから好みの作品であることが分かるハッとする凛とした画。最後まで想像以上にこだわりの画の連続で、アート的映像や絵画好きな方には堪らない作品かも。
定点から左右にゆっくりと振る独特の優しく丁寧なカメラワークが心地良い。冴える演出、とてもお洒落、だがシビア。

静かで目が覚めるような自然を丁寧に捉えた構図の中で感じる空気の動きは、巡る季節に想いを馳せる時間を観客に与えるし、牧歌的な農村の景色からは人々の営みと食物を生み出す農業への敬意まで感じられる。控えめで美しくも怪しい弦楽による音楽も印象的。興味を最後まで捉え続ける衝撃的傑作でした。
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