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博士と彼女のセオリーのEDDIEのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
4.4
“時間”は取り戻せないが、彼らの功績は確実に積み上がっている。“愛”の形の新たな再定義。スティーヴンとジェーンのラブストーリーを軸に、ホーキング博士の偉大さを知らせる伝記映画。エディ・レッドメインの役作りと演技に脱帽するしかない。

アカデミー賞5部門にノミネートし、エディ・レッドメインが主演男優賞を受賞。この年の同賞ノミネートが『フォックスキャッチャー』のスティーブ・カレル、『アメリカンスナイパー』のブラッドリー・クーパー、『イミテーションゲーム』のベネディクト・カンバーバッチ、『バードマン〜』のマイケル・キートンと誰が受賞してもおかしくない接戦でありながら、エディ・レッドメインの受賞に納得せざるを得ない、それぐらい圧倒的な演技でした。
そういえばベネディクト・カンバーバッチもスティーヴン・ホーキング役を演じたことがありましたね。
エディはホーキングという人間をだいぶ研究したのがわかります。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の主人公の物語は日本も含め多数あれど、ここまでホンモノに見せる演技は只者ではありません。特にALSになりかけのときの細かい表情筋や手指の動きの変化など、一つ一つの動作が半端ないです。

この作品は脚本こそ巧妙というわけではありませんが、役者の演技と音楽が観るものを引き込むのに十分な演出となっています。むしろ余計なことはせずとも、エディやフェリシティ・ジョーンズら役者の演技に全幅の信頼を寄せて撮影したことが見て取れる素晴らしさでした。

本作公開時はご存命だったスティーヴン・ホーキングですが、彼が偉業を成し遂げるにあたって妻や家族の支えがなくては立ち行かなかったことが容易に想像できます。
2人の互いを尊敬した上で本気で愛し合い、そして本気で愛し合うからこその離別もあり、そこに2人だからこその“愛のカタチ”というものを垣間見せてもらった気がします。

正直なところ、本作でホーキングの偉業がいかに凄いのかはあまりわかりません。いかにして偉大な発見をし、世界的に有名になったのか、その辺りの説明は大きく端折られています。ただ本作の大事な部分はそこではないのです。
彼の偉大な功績は世界的ベストセラーになった本を読めばきっとわかります。前述したカンバーバッチ主演の『ホーキング』という映画もあります。
そう、この作品はホーキング博士と彼女ジェーンの愛の軌跡であり、そんな2人の生涯を垣間見ることで、本来であればホーキングに興味を持たないような方でも興味を持つように風呂敷を広げた作品といえるでしょう。

映画、特に史実をもとにした伝記などではよくありがちですが、やはり映画の尺もあるのですべてを詰め込むわけにはいきません。きっと本作でホーキング博士の研究の方に力を注いだら大きくブレた作品になっていたでしょう。
絶妙にただの伝記映画では観に行かないような層にも届けることができる、そんな役割を持っていると解釈できます。

ジェーンを演じたフェリシティ・ジョーンズも素晴らしいです。幾度となく彼女の出演作レビューでは彼女を絶賛し続けてきた私ですが、やはり本作でも最高でした。結婚したい…あんな彼女に愛されたい。いや、愛されるより愛したいマジで。
とか訳のわからないことを言ってしまいましたが、フェリシティもアカデミー賞主演女優賞ノミネートの実力を如何なく発揮した作品と言えるでしょう。

劇場で観なかったことを後悔した作品の一つに名を連ねました。エディ・レッドメインやフェリシティ・ジョーンズが好きな方には是非とも観ていただきたいです。

※2020年自宅鑑賞168本目
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