ユカリーヌ

サヨナラの代わりにのユカリーヌのレビュー・感想・評価

サヨナラの代わりに(2014年製作の映画)
4.0
【過去に観た映画】2016.2.6

シャワーの中で抱き合う男と女。
湯気の中から熱い吐息がもれる。エロティックな出だし。

ハイセンスな家、セレブな友人夫婦に囲まれ、ピアノのある部屋で、35歳の誕生日祝いをしてもらっているケイト。
優しそうな夫は、「15年、君一筋だよ」と、ブレスレットを贈る。

そんな幸せの日から一年半後、
冒頭と同じシャワールームで、
ケイトは夫から介護を受けている。

ALSと診断されたケイト。
筋肉が痩せ細り、力が失われていく難病で、完治治療薬は見つかっておらず、進行も早く、
歩けない、呼吸も弱くなっていく。

夫は献身的にケイトに尽くし、
メイクまで施してあげるが、
出勤後には介助人が必要。

新しく雇った介助人のベックは
ミュージシャンを目指すも上手くいかず、奔放に生きる女子大学生。

そんな正反対のケイトとベックだが、次第に絆を深めて行く。
音楽でも対比させていて、
ケイトは上品なクラシックで
ベックはロック。

難病モノだが、お涙ちょうだいものてはなく、女の生き方を考えさせられる。

凛とした強いケイトはとても前向き、人として弱いけど真の優しさが見えるベックは
愛くるしく魅力的。
そして、二人が出逢うことで互いが変化していく様もみどころ。

同じ病気を持つ黒人のマリリンが
「この病気は私から足を奪い、心臓を奪ったわ。
でも、音楽は奪えない」と言う。
病気に立ち向かう強さの中に寄り添う音楽がある。

原題は「You're Not You」(あなたはあなたではない)
これはこの作品のテーマに通じている。

ケイトの夫のプロポーズは
「君といるボクが好きなんだ」と。

最後にケイトがベックに約束してと言う。
「私といる時のあなたでいて」と。

人は自分を偽ったり、素直になれなかったりする。
本当の姿を見せられる人がいることは素敵なことなんだと思う。


次第に弱っていくケイトを見るのは切なく、辛いが、
それを支えているベックの姿にも涙する。
動かないケイトの手を自分の手にのせて、ピアノを弾くシーンは、胸がしめつけられる。

色んなことができなくなっていくもどかしさ。
それなのに強く生きようとする姿には涙がとめどなくあふれる。
ユカリーヌ

ユカリーヌ