【過去に観た映画】2016.2.6
シャワーの中で抱き合う男と女。
湯気の中から熱い吐息がもれる。エロティックな出だし。
ハイセンスな家、セレブな友人夫婦に囲まれ、ピアノのある部屋で、35歳の誕生日祝いをしてもらっているケイト。
優しそうな夫は、「15年、君一筋だよ」と、ブレスレットを贈る。
そんな幸せの日から一年半後、
冒頭と同じシャワールームで、
ケイトは夫から介護を受けている。
ALSと診断されたケイト。
筋肉が痩せ細り、力が失われていく難病で、完治治療薬は見つかっておらず、進行も早く、
歩けない、呼吸も弱くなっていく。
夫は献身的にケイトに尽くし、
メイクまで施してあげるが、
出勤後には介助人が必要。
新しく雇った介助人のベックは
ミュージシャンを目指すも上手くいかず、奔放に生きる女子大学生。
そんな正反対のケイトとベックだが、次第に絆を深めて行く。
音楽でも対比させていて、
ケイトは上品なクラシックで
ベックはロック。
難病モノだが、お涙ちょうだいものてはなく、女の生き方を考えさせられる。
凛とした強いケイトはとても前向き、人として弱いけど真の優しさが見えるベックは
愛くるしく魅力的。
そして、二人が出逢うことで互いが変化していく様もみどころ。
同じ病気を持つ黒人のマリリンが
「この病気は私から足を奪い、心臓を奪ったわ。
でも、音楽は奪えない」と言う。
病気に立ち向かう強さの中に寄り添う音楽がある。
原題は「You're Not You」(あなたはあなたではない)
これはこの作品のテーマに通じている。
ケイトの夫のプロポーズは
「君といるボクが好きなんだ」と。
最後にケイトがベックに約束してと言う。
「私といる時のあなたでいて」と。
人は自分を偽ったり、素直になれなかったりする。
本当の姿を見せられる人がいることは素敵なことなんだと思う。
次第に弱っていくケイトを見るのは切なく、辛いが、
それを支えているベックの姿にも涙する。
動かないケイトの手を自分の手にのせて、ピアノを弾くシーンは、胸がしめつけられる。
色んなことができなくなっていくもどかしさ。
それなのに強く生きようとする姿には涙がとめどなくあふれる。