半兵衛

狂った触覚/激愛!ロリータ密猟の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.0
ハードなポルノ映画のはずが、これがプロとしての監督デビュー作品となる佐藤寿保の瑞々しい映画衝動によって『くちづけ』や『ポンヌフの恋人』を思わせる純粋すぎるボーイミーツガールへ。主人公の男なんて夜な夜な女性を監禁・暴行してゴミ置場に捨てるひどい奴なのに知り合った少女と新宿でのやりとりがあまりにも初々しくて顔が綻んでしまう。想像のカメラでお互いの顔を取り距離が近づきキスへと至る流れが完璧。

冒頭の暴行場面での合唱版『仰げば尊し』からザ・スターリンの『仰げば尊し』に至る使い方などの選曲センスや刺激をもとめるスタイルなど後年の佐藤監督らしい作風は既に完成されており、この監督はぶれていないなと改めて感心する。

やがて男性は自分の性への欲望を押さえきれず、行為をエスカレートさせてとうとう引き戻せないところまで来てしまい少女も男性と親しくなったことで被害を被り汚れてしまう。そんな二人が自分達の愛を貫くため、汚れたものを次々と破壊して『春琴抄』あるいは『盲獣』のような自傷行為へ。そこからのラストは愛の宣言でもあるようで、自分なりの映画を撮っていくという監督の宣言のようで心に突き刺さった。

ポルノ映画とは思えないくらい血がたくさん登場し、後半主人公たちによる衝動が巻き起こす血まみれの破壊の数々はジャーロ級。特に終盤での性器を傷つけてからの殺害シーンは結構ショッキング。

ラストはまさかのシド・ヴィシャス(これでソフト化が難しくなっているけど)、でもストーリーに合っていて違和感はない。

ヒロインの少女を演じる伊藤清美は映画製作時既に二十代中盤だったらしく実際あまり少女っぽさはないが、それでも幼い演技が上手いので違和感はない。あと喜んだりはしゃいだりするときの表情が全盛期のリリアン・ギッシュに次ぐくらいキュート。そして脇で池島ゆたか、下元史朗、港雄一と豪華なメンバーが参加してアウトサイダーな世界な人間を生々しく演じる。

それにしても真っ昼間の新宿アルタ前でおっぱいポロリとは…この時期のピンク映画のアナーキーさは本当イカれてるな。
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