MasaichiYaguchi

オデッセイのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.0
地球から2億2530万キロ離れた火星に取り残され、酸素ほとんど無し、水無し、地球との通信手段無しという無い無い尽くしの中で独りぼっちでサバイバルする主人公を描く本作は、本来なら悲壮感が漂いそうなものだが、予想に反してユーモアに溢れ、軽快にストーリーが展開する。
それはマット・デイモン演じる主人公マーク・ワトニーがどんなに絶望的な境遇でも諦めず、冷静に自分が置かれている状況、食料や水、残されている資材や機材、これらインフラがどの程度のものか、それらを使って何時まで生存出来るかを検証し、計画を立てて実行していくというスーパーポジティブな姿勢にある。
食べ物や水、そして電気、生存に必要不可欠なものが無ければ、創意工夫して生み出そうとするワトニー。
理工学や植物学をはじめとしたサイエンス系を専攻する人やした人、このような科学的なことが好きな人なら、本作品を観ると思わず自分の内なる理系魂に火がついてしまうと思う。
映画に登場するワトニーが科学的にサバイバルしていく内容は、学術的にも裏付けされたものとのこと。
その他登場するテクノロジー、ハブ(居住空間)、ローバー、宇宙服、RTG(原子力電池)、酸素供給装置等、NASAの協力や専門家に検証された実在のテクノロジーらしい。
このように科学的にアプローチされた作品なのに、科学に興味の無い人でも親しみを感じるのは、作品の中で何曲も流れるドナ・サマーやアバ、デビッド・ボウイ等が歌う1970年代のディスコサウンドにあると思う。
火星の生存を許さない荒涼とした風景と主人公の絶望的な状況に流れるこれらの曲はミスマッチなようでいて、曲の歌詞がシーンと絶妙にリンクして何ともいえない可笑しみを醸し出している。
そして、この陽気なサバイバル劇を作り出している最大の要因は、主人公のユーモアを忘れない前向きさと不屈な精神だと思う。
主人公のこの姿勢は、NASAだけでなく多くの人々の心を動かし、彼に対するエールのウェーブが大きく広がっていく様に心打たれる。
本作を観て、宇宙を目指したい人や宇宙に夢や希望を抱く人が多く出て来そうな気がする。