黒田隆憲

オデッセイの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

前々作『悪の法則』で、「こちら側の理屈の通じない世界に一歩足を踏み入れたらもうなす術はない。ただ運命を受け入れるしかない」というテーマを扱い観客を「絶望」のどん底に突き落としたリドリー・スコットが、「宇宙」というこちらの理屈が通じない世界で「じゃあ人はどうサヴァイヴすれば良いのか?」を描いた意味と意義は大きい。
地球に戻ったマット・デイモンが、NASAの候補生たちに講義するラスト・シーン。「〈もう終わりだ〉〈俺は死ぬ〉となった時、君はそれを受け入れるのか、闘うのか。そこが肝心だ。まず始めるんだ。問題を一つ解決したら、次の問題に取り組む。そうして解決していけば帰れる」と語っているように、この映画では「もう、これは詰んだでしょ」という状況から彼が「知恵」と「技術」を駆使して乗り越えていくのだけど、もう一つ、「ユーモア」というものが人間にとっていかに大切か?が描かれているのが本当に良かった。
音楽の使い方も素晴らしい。70年代ディスコが劇中でガンガンかかるのだけど、その意図的なミスマッチ(という「ユーモア」)が映画にこの上ないエネルギーを与えているし、デヴィッド・ボウイ「スターマン」が流れるシーンで宇宙船のクルーたちの人となりをテンポよく紹介していくのも上手いなあと。チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローバーがオタクの科学者役で出ていて、NASAの堅物上司たちを相手にプレゼンするシーンも良かったな。「オタクが世界を救う」という構造は『シン・ゴジラ』を彷彿させもした。
『ブロークバック・マウンテン』にも出ていたケイト・マーラも可愛かったし、マッケンジー・デイヴィスが画面に映るたび胸キュンだったし、ディスコミュージック好きの船長役を演じたジェシカ・チャステインが後半、リーダーシップを発揮しまくるところはメチャクチャかっこよかったし、女性俳優陣のキャスティングも素晴らしかったです。リドリー・スコットはやはり信頼できる監督。
黒田隆憲

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