Omizu

昔々、アナトリアでのOmizuのレビュー・感想・評価

昔々、アナトリアで(2011年製作の映画)
4.3
【第64回カンヌ映画祭 グランプリ】
『雪の轍』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作品。カンヌ映画祭でグランプリを受賞、トルコ・アカデミー賞では作品賞など10部門を独占したという。日本では劇場公開されず、DVDスルーとなった。

そのせいかDVDも全然出回っていないし配信にもなくて困っていた。そしたらディスカスで奇跡的に借りられた!タイミング大事。こういうときに観ちゃわないと。

なるほどこれは高評価されるわけだ。『雪の轍』『読まれなかった小説』とハマりきらなかったジェイラン作品、本作は心から傑作だと思った。しっかり尺の長さに意味がある。

なにやら人を殺したらしい男二人と捜査官たち。死体を求めて右往左往するのだが、その中に煮え切らない人間関係が展開していく。

犯人二人、警部、解剖医、検察官を中心にした群像ロードムービーで、徐々にトルコ社会の歪みが浮かび上がっていくサスペンスでもある。これは上手い。

映像が見ものであり、これがちゃんと劇場公開されなかったのは勿体ない。確かに長くて一見地味だけど、映画館で観るべき映像美だった。

車三台がトルコの荒涼とした大地を闇の中走っていく。死体の場所をはぐらかす犯人たち、男だらけの中現われた美女、闇の中に浮かび上がる光など印象的な映像だった。

殺人事件の果てにみえるのは憎悪と社会のゆがみ。それらを見通す解剖医。彼の視線の先には…
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