ばんてふ

おみおくりの作法のばんてふのネタバレレビュー・内容・結末

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

・前半は正直退屈なシーンが多い。ストークの人生をたどるところは山もなく谷もなく。しかし、ラスト20分から一気に話が展開する。あまりの急展開に驚き、ボロ泣きした。

・ラストシーンで彼がお見送りした人の幽霊が、彼の死を見送るというシーンがとても感動した。最後の最後にファンタジー要素を入れてきたところがすごいと思った。なんというか、この作者はお見送りする意味を自分なりに提示していた気がする。ジョンは、会ったこともないストークを「友人」と称した。ジョンが彼の人生をたどることで、ストークの気持ちや生き様を知り、ジョンの中に残り続けている。ラストシーンでは様々な幽霊が登場したが、これは皆彼の中に残っていたから最後に出てきたのだと思う。つまりは彼が誰かのためにやっていたことが、知らぬうちに自分のためになっていたのだと思う。『グランドフィナーレ』という映画との共通点は「人生とは何か」というテーマに基づくものだということ。

・その時は気づかなかったけど、きっとケリーはジョンがやった通り、自分でジョンが死んだことを調べて、墓へやってくるだろう。もしかしたら、死んだ時の状況を聞いて、犬のマグカップを買ったあとだと知るかもしれない。そうであって欲しい。

・エディマーサンの表情はほとんど変わらない。その分少しの変化がとても大きな変化だったりする。彼の眼は少年のようだった。寝そべっているときの顔が特に。純粋なんだなと。彼は融通が利かないコミュ障かと思ったら、店員のお勧めに注文を変えたり、空気を読んでホームレスとまわし飲みしたり、落ちてるアイスを拾い食いしたりと、意外と人間らしい部分が出てる。

・完全に主観だが、彼は身寄りのない人間だからこそ本気でお見送りできたのだと思う。自分の愛情を誰かに注ぎたかった。知らない誰かでも。彼が最後の仕事を終えるとき、ケリーに近づく。これは彼の愛情の行き場がケリーに変わろうとしていたのだろう。彼が死ぬとき不思議と辛そうな顔をしていなかった。彼は彼なりに満足な生き方ができたのだろう。

・原題の「still life」は言い換えれば「死してなお生き続ける」ということになる。つまり、身寄りがない人も死後彼の中でずっと生きていくということを言っているのだろう。そして彼も誰かの中で生き続けるだろう。
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