タバスコス

セッションのタバスコスのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

気弱なドラマー志望が鬼教官の指導によって自らも怪物となり果てる。
サクセスストーリーのような側面もあるが、その途上は狂気に埋め尽くされている。登場人物の狂いっぷりが面白い。

フレッチャー(以下ハゲ)は常に理想を求め続け暴力的な指導を続ける。
前半、元教え子の訃報に涙を流す姿や友人と談笑する様子を見て、ハゲも人間なのだと感じさせる場面がある。
しかし、後半、挫折した主人公と同じく大学を辞めたハゲがジャズバーで出会い言葉を交わすシーン。ハゲはまっすぐなまなざしで「偉大なジャズミュージシャンを育てたかった」と話す。
完璧なテンポを追求し続けた結果、ハゲの感覚は完全にズレていた。
輝かしいキャリアを積み上げていた元教え子をなくした時の涙は、偉大なジャズミュージシャンを育てられなかったことへの悔し涙であったのかと感じさせるような非常に恐ろしい一幕であった。

主人公はジャズオタク、一時は主奏者となり、彼女も出来て順風満帆かに思えたが、ハゲの指導に段々と人間性を失ってゆく。
主人公はフレッチャーの指導の過激さに呼応するように音楽への理解に乏しい家族や目的意識の薄い彼女を見下すようになった。
結果的に主人公はすべてをかなぐり捨て音楽と共に生きることを決めた。
「何があっても次のバードが挫折することはない」ハゲの言葉に応えるかのように一心不乱にプレイする。

フレッチャーと主人公のツーショットはさながら悪魔との契約の一場面のようで印象的であった。
単なる暴力熱血教官ではなく、陰湿さをも兼ね備えた邪悪な存在を題材にしたホラー映画のような味わいで面白かった。
タバスコス

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