そーた

セッションのそーたのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.5
ラスト9分19秒に映画の全てがありました。

リュミエール兄弟が世界で初めての映画上映を1895年にフランスで行いました。

シネマトグラフの誕生です。

工場から出てくる人々や駅に入ってくる汽車を映し出した彼らの映画。
当時の観客に驚きをもって迎え入れられました。

それからちょうど120年たった2015年。
近年まれに見る大作映画豊作の年になりました。

一生に一度あるかないかの、まるでお祭りのような年。

そんな節目の年に、僕が一番に選んだのが今作なんです。

プロドラマーを目指す青年と音楽学校の鬼教師との師弟関係を描いた作品。

ストーリーはシンプルながらとてもスリリング。

いや~、ほんとに凄かった。

鬼教師を演じたJ・K・シモンズの鬼気迫る演技と、血へどを吐いてその教師のしごきに食らいつくマイルズ・テラーの演技。
この映画の最大の魅力はそこにつきます。

ちょっとやそっとの映画ではこんな演技は見れないレベルでしょう。

主人公が過酷で壮絶な練習をこなし、熾烈なライバル競争に打ち勝っていく様には胸が熱くなります。

そして、突然の衝撃展開にはただただ唖然となる。

音楽シーンのクオリティーが高い反面、鬼教師の振る舞いや主人公に降りかかる数々の災難が衝撃的過ぎて、その振れ幅の大きさゆえ、僕ら観客は完全に手玉に取られてしまいます。

監督のデイミアン・チャゼル。
若いのに凄い才能です。
僕、同い年。嫉妬しちゃいますよ。

さてさて、この映画の触れ込みにもあったラスト9分19秒。
 
あの展開を誰が予想できたでしょう。

例え出来ても、
俳優二人の常軌を逸した演技とあの場の張りつめた空気感には、僕たち観客は文字通りの傍観者にならざるを得ません。

凄いCGや迫力のアクションがあるわけでもなく、
生身の人間が対峙して生身の演技を見せつける。

映画の全てがそこにあるような気がしました。

リュミエール兄弟がスタートさせた映画の歴史の、
1つの終着点と言ったら言い過ぎかも知れません。

しかしそこまでの表現力を映画が持ち得たということは確かに言えるんです。

あのラストに120年分の歴史が凝縮されている。
そう、思いたくなるくらいしびれました。

そんな映画を見ることができた2015年、凄い年だった訳です。

いつか孫に伝えようと思いました。
そーた

そーた