JIZE

セッションのJIZEのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.6
ラスト9分19秒名曲Caravanの極限旋律が鋭く胸を打ち凄過ぎた..会場の不穏な雰囲気や尽きる事なき底(終幕)を微塵も感じさせぬフレッチャーの怒号(狂乱)染みた鳴り響く最速最強ドラム音,才能(狂演)VS狂気(怪演)に至る熱狂な師弟関係を繋ぐ快楽的顛末。その場に佇む全事象(物体)を瞬時的に呑み込み凌駕し終止符を宿し無音状態になる演奏中の数十秒...セッション(JVCジャズコンサート)の無事成功を堅く見守る鑑賞客の1人として凍てつく暇のないニーマンの狂演奏に完璧に呑まれER(終止符)を繋ぐ瞬間も斬新過ぎて圧巻!!の一言。この精神領域に至る享受可能な限界を軽々と超越し狂乱域を繋ぐクライマックスが単なるジャズ映画ではない事を自明し同時にニーマンの底知れぬ激情が汗や表情,眼球,音に乗り(体現)言葉すら邪魔で不必要な創造域の限界を軽々と超越しエネルギーに満ち溢れるドラマー世界を痛感しました。ジャズ世界を介す殴り合い。本当"ボクシング映画"です。

結論から言えば,鑑賞(演奏)中も発狂する程にトップレベル!!素晴らし過ぎた..物語,脚本,演技,演奏,美術,撮影,演出..etcどの箇所を掻い摘んでも難を付けようがなく最高峰のジャズ(ボクシング)映画!!でした。物語の旋律的表情(動向)を展開毎に抑揚を効かせ歪ませ低音重音の迸るストーリーテリング。ラストのラストで落とす大転調を含ませた芸術的な狂演奏。ジャズ世界に言葉はいりません。五感で研ぎ澄まし感性でバトンを叩き無心で奏でる。完璧でした。アカデミー賞3部門制覇も至極当然な結果に思い正直『バードマン』と比べるに値せぬ圧巻的な出来栄え。作品賞もこの作品に与えたいくらいです。鑑賞後のカタルシス! ! ! !も十分に完備しERでの全編ジャズ調が更に陶酔させられ世界観の連なりが熱狂的にも刻まれ余韻に残る。

偉大なドラマーを夢見て全米屈指の名門校ジェイファー音楽院に入学した19歳ド新人ニーマンが初めて伝説の教師フレッチャー指導クラス"スタジオバンド(主席クラス)"の元で名指し指名を受け平凡クラスから移籍を命じられる。初日練習日の時間帯をフレッチャーから当初6時にクラス集合を命じられるが実際の集合時間は9時...とこの時点から"鞭打ち"は⁉︎...いやもしかすると冒頭での初対面場面からフレッチャーの洗練はセッションを奏で始めてたのかと考えると本当にゾッとしました。Whiplashを演奏する生徒達の一体感(ライヴ感)は否応無く1秒目から脳裏に刻まれハイテンポで繰り広げられる。挫折する者(マンガ君)もいれば必死にしがみつきフレッチャーの怒号に耐え忍ぶ者もいる。テンポ速度の違いからほぼ寸前まで「緊張しなくていい。演奏を楽しめ」とフレッチャーから指導された矢先「ファッキング テンポ! ! ! ! ! !」タンバリンを投げ掛けられる始末。終いには「無能な奴はロックをやれ!」とノーマンの手には既に無数のマメ潰れや血飛沫,絆創膏が恐るべき練習の実態を裏付けてます。他にもスティックを会場に忘れた事から繋がる悲劇的顛末や楽譜盗難による即興ライヴ,チャーリーパーカーと秘められた過去談,彼らのエピソードを拾うだけでも山のように存在しそれらの音色が厚みを施しラストCaravanに深々と着地。密告者と罵られる場面は最高に笑いました。なんせ季節が1度夏になり区切られた後でのあの仕打ちですから。

鬼才フレッチャーの毒素染みた生徒達を愛するが故に吹き出た数々の怒号がサイコパス感(精神疾患)を一層に煽り,椅子やシンバルを投げた掛けたり顔面平手打ち,舞台上での性急な楽曲変更等,全開で危うさを漂わせ"飴と鞭"の仕分ける範疇も指導者としてお手の物。恐怖的にも手際良く完璧。フレッチャーが終盤しがないカーネギーのジャスフェスにピアノ伴奏で特別ゲストとして参加し穏やかな表情でピアノを弾く場面は逆の意味で狂気さすら感じ恐るべき自己を上手くコントロール天才だと感じさせられます。彼のテンポ(生き方)は疾走感が表面上にダダ漏れ状態だけどふと垣間見る素顔が儚く一流の芸術を常に創作しようと願うジャズ界の優れた指導者でした。本当素晴らしい。一方,努力の天才ニーマンはスカウト願望を抱き天才ドラマーに上り詰める為,恋人と別れたり友達との遊びすら拒絶..唯一の至福は描写から察するに父親ジムと映画を鑑賞しながらポップコーンを食べる娯楽描写のみだったと思います。ジムとポップコーンを食す描写は全編通じ2回あるんですが1度目と2度目の背景や現状,表情の違いを吟味し追体験するのも醍醐味かもしれません。ニーマンがそれらの全思考(日常)を懸け3人(ニーマンorタナーorコノリー)まで絞られた主奏者の1人に上り詰めドラマーとして頂点に君臨する為にフレッチャーの教えを理解し解き一瞬の狂いもない(狂自体はあります)完璧な主奏者てし己に全精神を憑依させ全ての気力を懸けセッションする。彼の冴え渡る表情を只々眺めるだけで圧倒されます。

結果的に,物語(譜面)を通じた2人の必然的出会い(Whiplash)から長きに渡る終止符(Caravan)までの頂点や奈落の底を往復的にニーマンの動向として刻ませリズムテンポ(音域)が程良いスパイスを醸し出しジャズ映画風に仕立てた構成も映画として見事に飛躍し傑作だと思う。

従い,『イミテーションゲーム』を凌ぎ現在暫定1位決定!!再三に渡り述べましたが今作は"ジャズ映画"を装う"ボクシング映画"です。狂気VS才能いや狂演&怪演のニーマンとフレッチャーの苦くも熱き師弟関係が終盤演奏に至るまで崩壊寸前だっただけにラストで重なり待ち受ける衝撃顛末とニーマンの選択に大注目。ニコルとの恋愛模様もあります..ただあくまで補助線として楽しみ飴と鞭の飴部分として見方をオススメします。今作の否定面を強引に導くなら楽譜盗難者の素性。これは誰なのか非常に気になる。そこ1点が心残りです。ちなみに私の予想はフレッチャーの部下がわざとニーマンの既存資質を高めさせる為仕組んだシナリオだと踏みました。終盤,演奏中でもフレッチャーの笑みをさりげなく画面ギリギリで隠すカメ技術の潔さに心底素晴らしく心から賛辞を送りたい。『バードマン』と比べる余地は正直皆無でした。音域的にも今シネコンで今作を逃すのは絶対的にもったいない!DVD/BD待ち⁉︎NO!NO!NO!リアルタイム劇場で是非,オススメです!!!!
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