B姐さん

セッションのB姐さんのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

ある時は自分の娘がティーンで孕もうが理解ある父親で、ある時は嫌みな新聞編集長のJKシモンズが「ハートマン軍曹 *」化し、貧乏で孤独でコンプレックスが強いヘタレな少年とジュリアード音楽院みたいな所でぶつかり合う話。

正直主人公のドラミングのように作劇が粗い。
音楽による“広がったもの”として大団円をむかえない。
しかし定型にはない、結構大胆に省略されたドラマには新鮮味がある。そして個人的に、主人公が自分の人生と格闘する話が大好きだ。そこには勝ち負けのようなものがない。置かれている境遇を受け入れられずに、もがき、ばたつき、諦めきれない姿を見ると、どうにもこうにも嬉しくなってしまう。泣けてくるし、応援したくなる。
でも、結果的には泣けなかった。いや泣きそうになった時、途中で涙がひっこんだ(まじで、するっと)。

単なる設定上の舞台装置で、代替可能なものとしての音楽がラストで変質し、代替不可能な「マストなもの」として演出されていない。そう見えない。
具体的に言うと、音楽によって「救済されたもの」として“うまく”描かれていない。演出、撮影、なにか微妙だ。
音楽の持つ快楽的な力をこの映画から少しでも感じることができたなら、簡単に“スイング”していたと思う。そしてそれは、主人公が「個」の呪縛から完全に解き放たれて「セッション」し(というか「アンサンブル」)、真の“グルーブ”を手に入れた時だろう。それを観れたなら、たぶんカタルシスの海で溺れていた。

一番期待していた作品だったのでストレスがハンパない。
このスッキリしない感じを抱えながら歌舞伎町を歩いていると、気味の悪いオヤジが何やら声をかけてきたので早歩きで振り切った時、すぐに後悔した。
「1、2、3、4、1、2、3、4ファッキンテンポーォ!!」とオッサンにテンポよくビンタをかまして、このモヤモヤを発散するべきだったのだ。

@TOHOシネマズ新宿(5/1/2015)

*おまけ
 ハートマン軍曹:https://youtu.be/dxLUtipeke4
B姐さん

B姐さん