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アバター:ウェイ・オブ・ウォーターのryoのレビュー・感想・評価

1.8
IMAX3Dで鑑賞したが,これは完全にミスマッチ.

IMAXの大きなスクリーン・映像が,3Dにすることで奥行き感は増すものの,縦横のサイズが小さく感じられ,IMAXらしい迫力が損なわれてしまっていた.

特に被写体がアップになっているシーンで顕著に感じられた.

3Dよりも2DのIMAXで観たかったというのが正直な感想.

撮影監督はラッセル・カーペンターで,ジェームズ・キャメロンとは『トゥルーライズ』と『タイタニック』で組んでいるため,キャメロンのやり方をよくわかっているからの起用だろう.

全編デジタル撮影で,メインのカメラはソニーのVenice,それ以外にもソニーのPXW-Z450というカメラが使用されたようだ.

海上のシーン,特に自然光の強い場面では,実写とCGの合成部分でグレーディングに違和感がある箇所がいくつかあったものの,細かい編集でギリギリ許容範囲内に留まっていたが,個人的には粗を感じた.

それ以外のキャラクターの描写については,いかんせん,「普通の姿の人間」がほとんど登場しないので,撮影時のライティングや撮影自体に多少の問題があっても,ポスト・プロダクションで何とかなってしまうだろうと思われるのは,技術の進化がもたらした功罪か.

映像は確かに凄いと思ったが,作品としても素晴らしいかと問われると話は別.

VFXは前作よりはるかに精度は上がっていて,特に現実に存在しない生物などは一体どうやって撮ったのだろうと思ったし,美術や衣装にもかなり手間をかけているのはわかるが,脚本に特筆するほどのものがなく,果たして3時間を超える作品にする必要があったのか疑問が残る.

しかもこのシリーズはあと3作も製作が予定されているが,正直それだけのシリーズとして製作する内容とは思えない.

映像の技術革新を披露するための作品に終始してしまう予感しかない.

キャメロンは多作な監督ではないので,本シリーズにそこまで執着する理由がよくわからない.

それならば前作と今作で培った技術を利用して,他のテーマで製作したほうが良いのではないか?

各マシンは人型ではない「ターミネーター」によく似ているし,パワードスーツは『エイリアン2』に出てきたもののようで,クライマックスで船が沈むシーンは『タイタニック』そのものだった.

過去の自身のアイデアを使い回すしかないほど枯渇しているのか,もうキャメロンは本シリーズを作り尽くすことでしか映画を撮れなくなっているのだろうか,とさえ思ってしまう.

キャメロンは技術的な部分で映画史の分岐点となる作品を撮ってきた監督だ.

その貢献度は計り知れないが,「名作」を撮ってきた監督かと問われると,否と答える他ない.

見たことがない映像を追い求めるあまり,肝心の作品の質が後回しになってしまうようでは本末転倒.

前作から今作までの間に,ノーランやヴィルヌーヴといった,まだこれからの監督たちが台頭している中,キャメロンはこのシリーズに執着するあまり,時代に取り残されつつあるように思えてならない.

本作を鑑賞して,そのことを強く感じた.
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