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海にかかる霧のミスターのレビュー・感想・評価

海にかかる霧(2014年製作の映画)
4.0
貧困にあえぐ漁船が密入国を請け負う仕事に手を染めたことで悲劇が起こる話。
チェイサーや悪魔を見た、オールドボーイなどの有名どころしか押さえていない自分なので、あまり俯瞰的な視点ではないと自覚しているが、それでも個人的に韓国サスペンスの魅力と感じるのは、男女という二項対立を明確化し、女性=男性に消費される従属物という極めて差別的な思想が極限状態になると男性の中に生まれるというグロテスクな展開を躊躇なく描けるところにあると思っている。極端なポリコレによって娯楽物まで平等の名の下に様々な矛盾と違和感が生まれている平成後期から令和の映画業界と比べると、その思い切りの良さは見事。
長くなったが、この映画もその韓国サスペンスの魅力を随所に感じられる。極限状況の中で連鎖的に悲劇が続く展開、そんな中で生まれる純愛とその切ない結末、意図せず加害者になってしまった者たちの心理の変化などなど、激しくも儚い雰囲気が常に満ちている。やはり白眉は船長。家族もいなくなり、船と船員しかなくなってしまった男の暴力と悲哀はなかなか。沈没する船の上で「みんなどこに行ったんだ」と叫ぶ場面は特に切ない。
骨太なサスペンスをみたい方にはおすすめ。ただし暴力描写は生々しいので注意がいる。
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