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この国の空のtのネタバレレビュー・内容・結末

この国の空(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

脚本家として名高い荒井晴彦氏の監督作2作目。終戦間際の東京杉並区における、いわゆる禁断の恋愛を描く。

五感に訴えかける象徴物に満ちた語り口は、とても好みであった。トマト、米、衣服、蚊、バイオリン、布団、空。
真昼の神社で、堰を切ったように激情が溢れ出すシーンが特に素晴らしい。轟音とも言える蝉の鳴き声の下で行われる光景は、空襲の騒乱の下でしか成立しえない恋愛のはかなさを示唆しているようで物悲しい。
決定的な出来事の前には必ず「食べる」行為があり、その儀式が現れる度次は何が起こるのだろう、と期待してしまう。
ロマンポルノの脚本を多く手がけていた監督だけあり、随所にそれらしさを嗅ぎ取れた。ラスト、二階堂ふみのアップに現れるテロップはさすがに少し古典的なものを感じる。
エンドロールで朗読される茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき」はこの映画に相応しい名文。
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