享楽

エレナの惑いの享楽のレビュー・感想・評価

エレナの惑い(2011年製作の映画)
4.0
何の作品情報も取得せずパッケージの雰囲気に惹かれて鑑賞。
冒頭の閑散とした早朝、一点に焦点を当て烏が鳴く様子を長く映したカットからモデルハウスのような部屋の中が映され次に起きる妻…と、どうやら日常のリアリティが映されているようだが…

日常的なアイロニーが良く描写さてたように思う。要するに今作における最大の皮肉は血の通った愛する者、つまり自分の子どもはその客観的本質はどうであれ”可愛い”のだが、甘やかし自由を与え過ぎたが故に(またこれからもそうしてしまうために)皮肉にも自分の思い通りの子どもに育たなかった、悪い方向へと転じてしまった。ということであろう。
現代の親の甘やかしや自由放任主義的教育に対する警鐘、という印象が1番強く残った。
ロシア映画ならではの静寂な雰囲気の美しさ、色彩、構成の美しさは言うまでもないとしてやはりそういった長期的な家族の在り方、をそこまで主義主張を通さずあくまで客観的に見せているのが今作の魅力。
更年期に結婚すれば血の通っていない義理の関係に、つまり今作で言えばもうそこまで育ってしまった者を変えるというのは常人でな困難なのだろう、という哀しさ性格形成論的にいえば子どもというのは親の性格と文化の影響を受けて漸次的に性格が決定されて行くが、親の知らぬ間に子どもというのは悪影響を受けていて、それがどうにもならなくなってしまったという二つの哀しみ、ですね。一貫して流れていた不穏な背景音楽も先行きが悪い方向へと転じて行くことを彷彿とさせ効果的。
亡くなってしまった夫側の娘の様相、社会的現状をもう少し提示して欲しかったですが…
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