このレビューはネタバレを含みます
「草原の実験」
何の実験?何かの暗喩かと思い鑑賞開始。
中央アジアを思わせる広大で美しい草原に住む男女。この2人は夫婦なのか親子なのかと思いながら観ていると、全くセリフが無いことに気付く。甲斐甲斐しく世話している様子等から親子であると思われたが…この娘が恐ろしい程美しい。透明感ある厳しい美しさ(この後のストーリーと合致する)と言うべきか、好き嫌いは置いといて、とにかく浮世離れした美少女。エリーナ・アン(当時14歳!)韓国人の父とロシア人を母に持つ演技経験ゼロの少女だとのこと。
彼女を中心にストーリーは進んで行くが、いつもトラックで出かける父の容体が悪化、そこにガイガーカウンターを持った兵士らがきたことで、実験とは核実験のことであるとわかる。父は死に、立ち退き勧告らしきものが届き、いつしか彼女の住む草原は有刺鉄線で囲まれる。平和な街に住む同じ年頃の少女同様、彼女に恋心を抱く2人の青年との淡い触れ合いも描かれており、殴り合いの結果金髪の白人青年が彼女を得る。そしてその翌朝、突然キノコ雲があらわれ2人は跡形もなく吹き飛ばされる。
人類が行った核実験は2000回あまりと言われている。しかし、本作の舞台となったであろうカザフスタンのセミパラチンスク核実験場(四国程の面積)では、40年程の間に456回!もの核実験が行われたとのこと。そもそも人類が2000回の核実験を行ってきたこと、そして四国程の大きさの土地で456回も行われたことを知っている者がどれだけいるだろう。私自身も本作を観るまで知らなかった。
そこには本作のドラマのような事もあったろうし、美しい土地と少数民族が犠牲になってきたのだろう。
セリフ・音楽・説明が一切無し。眠くなるかな?と思って観ていたが、逆に引き込まれてしまった。核実験、ひいては核兵器や人間の愚かさを知らしめる為に有意義な映画。
美しい草原とそれを破壊する核実験。何をか考えざるを得ない映画です。