グラッデン

ガルム・ウォーズのグラッデンのレビュー・感想・評価

ガルム・ウォーズ(2014年製作の映画)
2.4
舞台は「ガルム」と呼ばれるクローンたちのの戦いが続く惑星・アンヌン。最終戦争を控えたある日、ある部族の逃亡を機に、異なる部族に所属する3人がガルムの真実を求めて旅に出る。

押井守監督の最新作。本作は長年構想にあった監督の原案をもとに、脚本・監督を務めており、久々に押井監督色の濃い、尖った作品になっておりました。

言い過ぎかもしれませんが、カルピスの原液のような映画だった。そのままでは濃すぎて、少し水で薄めないと飲めない感覚に近い。

世界観の構築としては、現実世界とは地続き、あるいは近未来の設定が舞台になることが多い押井作品では珍しい、異世界ファンタジー風の作品(これまたマニア必修レベルだが『天使のたまご』なんかを思い出した)。冒頭に展開される、押井節な難しめの説明は気持ち半分で聞き流し(実際OKだった)ていたが、バックグラウンドは練りこまれていたのは感じ取れた。

それだけ広げた風呂敷が大きい分だけ、物語の内容がまとまりなく、部分的に見えてしまったのは残念ではありました。
異なる世界の、その核心に迫るというアプローチ自体は良かったと思いますが、その世界の説明が終始「頭でっかち」なモノで消化不良だったり、主要人物たちの描き方、そこに至るまでの物語の流れも違和感を覚えるような流れで上手く乗りきれず。そんな中で圧倒的な存在感を放つのが犬(もちろん監督の好きなカセットバウンド)というのは、ある意味で押井監督らしいと思いました(笑)

ただし、昔『アヴァロン』を見た時に感じましたが、押井監督の画面の作りに対するアプローチは、今回も間違いなかったと思います。本作の内容を作る上での求められるアニメと実写の使い分け、こうした方が良いという作り方だったと思います。それだけに、予算も多くない中で現場は相当大変だったんだろうなと感じたりもします。

過去の押井作品で提示してきたような、革新的な映像技術やインパクトのある構図は提示されませんでしたが、日本映画、あるいは日本人監督が異世界やファンタジーの世界を映像で表現するために必要なスタンダードは示されていたのではないかと。