YukiMuranishi

エレファント・ソングのYukiMuranishiのネタバレレビュー・内容・結末

エレファント・ソング(2014年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます


ひとにとって"気持ち"というのは最も身近で、最も遠い。そもそも、見えない。相対的で各自的で人それぞれで、共感はされても共有され切ることはない。(脳波を再現するヘッドセットをみんな被るようになるまでたぶんムリ)
当事者が絶対的に価値のあると思うことでさえ、部外者たちは状況に応じて推し量ることしかできない。ものすごく自明のことだけど。ひとはこれに想像力を駆使して対応している。「コミュニケーション」という技が体系的に開発されてきた背景はこういう感じだろう。

マイケルアリーンの絶望の核心はこの断絶にあり、もっと言えば彼を苦しめ続けた他人との隔たりが無ければチョコレートの箱が手渡されることはなかった。

知性と工夫を自分の死に向けて振るうというのは、どういう気持ちなんだろうか?順調に企みが成功してしまうことに快感もあったのか?コアアイデアを思いついた時に、脳汁でる感じはあったのかしら?わかりっこない……。気持ち、見えねーし。

少なくとも「この人たちは何を知らないか?」と他人の立場を思い遣る状況判断ができなければ、企みが完遂されることはなかった。それだけコミュ力あるなら使い方次第で幸せになれたろ、マイケル。本当悲しくて滑稽。こんなに悲しんだ話が、こんなに喜劇的だなんて。

普段あまり感想を持てない自分だが、鮮やかなストーリーテリングのおかげで最後まで没入感が切れませんでした。素晴らしい脚本を観れた〜
YukiMuranishi

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