モアナは女でも男でも「完璧な娘」や「完璧な息子」や「完璧な何か」になろうとしたことがある人には刺さる内容じゃないかな?
周りの期待と親心に対して必死で答えようとしていたけど、やっぱそれは違うんじゃないか、って散々悩んだ後、『自分で選んで』旅に出るモアナはメッチャカッコイイよ。
最後には、モアナは鬱病になっている脳天気な体育会系を救うんだよ、非力であったはずのモアナが知恵と勇気と決断力で、閉じこもってた人たちを救うんだよ、すげえよ。
最近のディズニーはすげえよ、何がすげえって観客への誠実さだよ……。
ベイマックスは「みんなヒーローになれるんだよ!!!」とは言わず「MITに飛び級で入れる男の子が努力し、仲間と協力して恩師を説得する話」だし、モアナは「プリンセスじゃなくても、努力次第で君も航海士になれる!」だよ?
人間みな「褒められたい」「これ(美貌とか若さとか仕事とか能力)をなくしたら誰が自分に見向きしてくれるの?」とか「完璧に役割を果たしたい」とかそういう鎖にガッチガチに囚われていると思うけど、それをチェーンブレイクする話やから、みんなに是非見て欲しい、モアナは……。
後ね、日本語版でちゃんと訳して欲しいって思ったんだけど、モアナは島にいる時、両親に「ここにお前の幸せはある」って言われて育つんだよ、んで、彼女が疑問を感じる時、歌う歌が『完璧な娘(※日本語版だといい娘)でいたいのに、海が私を呼んでるの』って歌ってんだよ。悲しいよ、モアナの両親も周囲も決してモアナを不幸にしようとしているわけじゃないんだ、モアナもそれを知っているんだ。
しかし、自分の心の声に何度も耳を傾けようとするんだけど、それがどれほど難しいのか、周囲の期待に答えて『完璧な何か』であろうとしたことが一度でもある人には分かるんじゃないかな。
でも、モアナはそんな愛や伝統のチェーンも、チェーンブレイクするんだよ。チェーンブレイクしただけじゃなくて、そのチェーンは自分を縛る鎖じゃなくて、もっと違う、別のことに使えるんだ、視野をちょっとだけ広げたり、ちょっとだけ別のことに足を踏み出したりするだけで、世界はこんなに違って見えるんだよ、って語りかけるだけ、というすごい誠実な映画なんだよ。