MasaichiYaguchi

龍三と七人の子分たちのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

龍三と七人の子分たち(2015年製作の映画)
3.4
本作で弾けるジジイパワーで何度も笑ってしまった。
北野武監督のこの作品は「アウトレイジ 」シリーズと同様にヤクザを題材にしているが、趣は全く異なる。
社会にも家にも居場所のない元ヤクザの親分がオレオレ詐欺に引っ掛かったことを切っ掛けに、昔とった杵柄よろしく昔の仲間を呼び寄せて奮闘していくさまをコミカルに描く。
主演の藤竜也さんは、かつては「鬼の龍三」と畏れられた義侠心の強い元親分を、何処かキュートさのあるジジイとして演じていて魅力的だ。
特に映画の後半で見せてくれる「コスプレ」には思わず噴出してしまった。
そして他の出演者たち、近藤正臣さん、中尾彬さん、小野寺昭さん等が龍三の個性溢れる七人の子分を嬉々として演じていて楽しい!
暴対法で一般社会から締め出され、元ヤクザということで家族からも忌み嫌われ、架空請求の恰好のターゲットにまでされるジジイたちが、詐欺集団の若者たちに本気で挑む本作は、現代のドン・キホーテかもしれない。
北野監督は、このドン・キホーテのドラマにジジイたちの悲哀を滲ませながら、かつての漫才ブーム全盛期ようなギャグや、古典落語「らくだ」を彷彿させるような展開を織り交ぜ、万人が楽しめるエンターテインメントにしている。
この作品の好評な反応に対してか、監督は「次は『龍三と七人の幽霊たち』をやる」と冗談交じりにコメントしているが、本作のラストでもちゃんと「落ち」をつけていて、何処までも洒落のめしていて愉快だ。