Yoshishun

龍三と七人の子分たちのYoshishunのレビュー・感想・評価

龍三と七人の子分たち(2015年製作の映画)
3.5
“緩〜い老人版アウトレイジ”

北野監督作としては『アウトレイジ』3部作よりもヒットした、主要キャスト平均年齢72歳の任侠コメディ。
北野監督らしいナンセンスギャグやブラックジョーク、そしてコミカルさよりも緩さを優先したギャグ演出は、ビートたけし名義の『みんな〜やってるか』や『監督・ばんざい!』を彷彿とさせる。しかし、この緩さが仇となったのか、どうも観た後は印象に残りづらい。

かつて有名なヤクザとしてブイブイ言わせていた龍三が、最近巷を騒がせるインチキ取り立て屋を締め上げるというシンプルなストーリーだが、そこに高齢者ならではの記憶喪失やまさに老害とでもいうべき言動の数々は笑える。ストーリーのつまらなさを隠すように、登場する龍三らお爺さんにはそれぞれ役職や個性をしっかり与え、主要キャラクターの強さには困らない。

しかし、それ以外のキャラクターは極めて個性が弱く、かつての『その男、凶暴につき』の白竜や、『アウトレイジ』の片岡のような登場するだけで異様な雰囲気を漂わせる悪役なども本作にはいない。北野武自身も本作についてはお飾りのようなもので、片岡的立ち位置で龍三に警告するだけの存在である。安田顕演じる西に至っては、ただ騒ぎ立てるだけのチンピラ以上のものがなく、これでは『アウトレイジ』の加瀬亮演じる石原の迫力には到底及ばない。

また、ストーリーはシンプルではあるものの、やはりオチが淡白すぎる。ラストのセリフを言わせたいがためにあのような状況を作り出したに過ぎず、拍子抜けなラストシーンには、過去の北野映画のような余韻が感じられないのである。加えて身内にヤクザがいることで苦労しているという台詞はあるものの、それを裏付ける描写に乏しいように、台詞で片付け過ぎな部分も多々ある。

ただこれだけのご高齢かつちゃんとヤクザっぽさも残したキャストを集めたのはやはりキャスティングの妙。龍三ら一龍会のキャラクターは素晴らしいので、何とか全編飽きずには観れた。その他の要素は今ひとつだったのが惜しい。
Yoshishun

Yoshishun