尿道流れ者

二重生活の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

二重生活(2012年製作の映画)
4.0
二つの家庭で二重生活を楽しみながら、合間に浮気を繰り返すニンフォマニアック社長が全ての発端。二重生活は中国における問題や闇が顕在化した一つの形として、実際に中国社会であることなのだが、社会うんぬんと言うより個人の資質による部分が大きいでしょこの場合って感じの飛び抜けた主人公のやりチンぶりが清々しい。

そんな社長さんに対して牙を剥く女たち。そして死んでしまった一人の女子大生。復讐劇としての面白さや女同士の駆け引きや嫌味など、ドラマとして面白い。暴力性や苦しみなども含めて流れる感情はとてもリアルで、中国社会の描き方もリアルなものなのだろう。しかし、そこには中国社会への問題提起や闇などを感じさせない。映画として、エンターテイメントとしてただ面白いだけ。
だからこそ、最後に突如現れる、それまでこの映画が作り上げてきた世界観をぶち壊すほどの超現実な存在による問題提起が深く胸に突き刺さる。
幾重にも重なりあった愛は罪深いものではあっても、国や制度が変わればうってかわって正しいことともされる程度の罪。しかし、そこで失われた物は普遍的に尊く、それを奪うことは最大の罪である。映画の導入にしかすぎない小さな悲劇。しかし、そこにある無念や喪失感はそれで済まされるものではない。この映画で軽んじられていたのは愛ではなく命。そこに対しての問題提起が鋭すぎてゾクっとさせられた。