夕

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイアの夕のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

友達にオススメされて鑑賞。
現代に生きるヴァンパイアに密着取材したドキュメンタリー番組という体のコメディ。大人が全力で真面目にバカなことをしてる作品は最高だってばっちゃが言ってた。
ヴァンパイアの生態も妙にリアルで面白かった。鏡に自分の姿が映らないから、仲間同士で服装が似合ってるかどうか確認してるって発想の勝利だと思う。みんなめっちゃ真剣に、絵にも起こして互いにチェックしてる。そのために何千何万回と人間の等身大の絵を描いているはずのに、描かれた絵が小学生レベルで下手くそなの好き。長く生きているだけで、なにか特技が身についたという訳でもなく、等身大なおじさん(というかおじいさん?)な感じがいい。
8000歳のヴァンパイアのピーターが怖い。全然喋らないくせに、異様に存在感が強い。割とあっけない最期で「え?8000年生きた長寿のヴァンパイアの終わりがこれ…?」って呆然としてしまった。ただ、ピーターの死を悲しむ仲間たちの姿を見て、共同生活の中で喧嘩し合うこともあっても、やっぱり同胞への思いは強いんだなってちょっと安心した。てか、イエスよりももっと前に生まれてる伝説級のヴァンパイアの名前がピーターって何さ。誰よりも平凡すぎるでしょ。
あとみんな大好きスチュー。スチューなら何をしてなくても許される。ニックは追放されても、スチューならいつでもきてくれてかまわないよ。キャストの名前を見て気づいたけど、スチューとジャッキーはキャストさんの本名も同じ名前なのね。ジャッキーはまだしも、スチューに関しては、絶対タイカの好きな友達連れてきて出演させてるだけでしょ。俺の大好きな友達(一般人)がコイツなんだって見せてるだけでしょ。スチューほぼ演技してる感じなかったじゃん。もう絶対に素でしかないでしょ。そう思うとそうとしか見えなくなった。
タイカ・ワイティティが監督してるのはソーの映画しか見たこと無かったけど、この人のコメディは無邪気な感じがして好き。(ラグナロクとラブアンドサンダーはマーベルの中でもトップレベルで大好き)馬鹿げてて滑稽で、だけど登場人物に寄り添っている。
たとえばニック。ニックはヴァンパイアになりたてで、最初の2ヶ月くらいはヴァンパイア人生をそれなりに楽しんでいる。ただ、段々とポテトや日光浴などの人間の時には当たり前だった日常が恋しくなってくる。ヴァンパイアになっても、ヴァンパイアらしいことを楽しもうとすると周囲の先輩たちに止められる閉塞感。正体がバレないようにするためには致し方がない部分があるけど、ニックは元々の性格もそんなに我慢強そうではないし、フラストレーションが溜まっていく。そのはけ口として、自分がヴァンパイアだと吹聴した結果、ピーターが犠牲になってしまった。ピーターが亡くなった時は、追放はされたもののそれほどニック自身には効いてなかったように見えた。やっぱりまだどこか俺は悪くないと思ってたんじゃないかな。
ただ、人間ご法度の舞踏会にストゥーを連れていった挙句、帰り道に人狼に襲われて、目の前で親友を惨殺される。惨い光景を目の当たりにして、1人悲しむニック。そこに寄り添ったのが1番ニックに反発していたディーコンなのが良かった。ずっと反抗期真っ只中だったディーコンがニックを慰める姿に、人の不器用な優しさを感じた。慰め方下手くそ過ぎだけど。
最終的にはハッピーエンドになって見ていて安心できた映画だった。アホだけど、ホッコリできる要素もあって、タイカはやっぱりいい。
夕