B姐さん

ナイトクローラーのB姐さんのネタバレレビュー・内容・結末

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ストーリーに目新しさはない。お兄ちゃんのトニー・ギルロイもそうだが、弟ダンもユーモアが足りない。演出がやたらとストイック。脚本家上がりの監督にありがちな、丁寧に描き過ぎるため、少々中だるみする。大胆に省略をしない。だから隣の席のオネエさんにつられて眠くなることしばしば。

失業中のため、ケチな泥棒で生計を立てている男がひょんなことから“天職”を得る。そこから彼のいわゆる「世間の常識」とか「モラル」などお構いなしの暴走が始まるのだが、初めから主人公の男(ジェイク・ギレンホール)には「常識」とか「モラル」などない。
しかし、主人公が職を手にしてからスキルアップしていくのに反して、精神的には無成長で「空っぽ」なのが圧巻だ。最初は極々個人的な「空っぽさ」が、他人まで支配することになり、社会と同化する様をジェイク・ギレンホールの「顔」だけ表現しているのが凄い。

「現代社会の危うい、空っぽな空気もしくはシステム」の隠喩としてジェイクの「顔」が本当に怖い。だから本作はからっぽな奴のピカレスクもの、もしくは「空っぽ」な人間が赤いスポーツカーに乗って他人を食い物にやってくるという新種のホラーだ。
そしてジェイク・ギレンホールこそ「ミスター空洞」にふさわしい。いつも彼はどの映画をみても人を透かして見るような目、そして、いつも他人事のようにみている顔をしている。驚くべきことは、彼が自分の「空洞キャラ」にすごく自覚的なことだ。まあ自覚的でなければプロデューサーはできないとは思うが。さらに驚いたのは、あのレネ・ルッソを見事に不細工なオバさんに仕立てたこと。普通自分のカミさん、あそこまで醜悪に撮らないよね。

@シネマカリテ(9/9/2015)
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