B姐さん

ワイルド・スピード SKY MISSIONのB姐さんのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

ジェームズ・ワンという監督はサービス精神旺盛だ。そしてあざとく、いやらしいぐらい“うまい”。ツボをよく知っている。

開始から1、2分ぐらいで、主要登場人物のキャラ、行動原理、ストーリーの背景をサクッと終わらし、おなじみのレースシーンを入れ(女のコのおしりぷりぷりハイスピードのやつ)、初めて観る人間にも一気に敷居を低くして「今から面白いもん見せてやっからよ」とオラオラな感じでグッと肩を引き寄せる。ツッコミ不用の阿呆で全開なハチャメチャなアクションの連続も素晴らしいが、アクション前のシークエンスとかもいい(個人的には戦闘準備シーンが一番アガる)。
このシリーズで初めて感じたことだが、アメリカン・マッスルカーに乗っている感覚になった。いや、正確に言うならば、映画のドライブ感がマッスルカーっぽいのだ。プロット進行がライディング、シフト・チェンジと同期しているのではないかと錯覚するほどだ。※ちなみにカーアクション・シーンの車内ショット、ギアチェン→クラッチとアクセルのつなぎが、シリーズ中一番かっこいい。
中盤のミッションで気がついたことがある。先鋭部隊との激しい戦闘の中、「チーム・ワイスピ」の衣装が変なのだ。完全に場違いな格好。ドミニク(ヴィン・ディーゼル)はふつうのTシャツ。ブライアン(ポール・ウォーカー)もTシャツ、その上にパーカーそしてジーパン。とても「戦い」に行く格好ではない。近所のコンビニに行くスタイルだ(つっかけは履いてないが)。途中まで椅子に深く座りゲラゲラ笑って観ていたのだが、後半ドミニクが「ストリートで返り討ちにしてやるぜ」と言ってハッと思った。ストリートと地続きで戦っていたってことじゃん!だからあんな格好で戦っていたのか!それがわかってからは一気にのれた。
終盤、シリーズの最初に回帰してストリートに彼らは戻ってくる。やっぱり「走る不良たち」にはストリートこそが戦いの場であり、お互いの存在意義を確認する所であり、一番の「ホーム」なのだ。ここの中盤から終盤に移行する時が一番たまらんかった。
最後のあざといとも言える演出には「普通に」泣く。それがわかっていても泣いてしまう。でもオイラは「ここで簡単に泣いたら負け」と思って我慢した。それは、続編でのスクリーン上の、ストリートでの「不在」を確認してからでもいい。

ジェームズ・ワンは、やっぱりあざといと思う。
そしてうまく、ツボをよく知っている。
だから、原題と同じタイポグラフィで“FOR PAUL”の字幕が出るのを横目にソソクサと色んな余韻を振り切るように退出した。

『横浜家系映画』中、傑作。

@TOHOシネマズ渋谷(4/30/2015)
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