MasaichiYaguchi

Dearダニー 君へのうたのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

Dearダニー 君へのうた(2015年製作の映画)
3.5
実話に基づいて映画化されたアル・パチーノの主演作は、ジョン・レノンの名曲の数々と親子愛、そしてユーモアに彩られた作品。
ビートルズ世代や1970年代のロックファンにとって、この作品の世界観や業界ネタは多少デフォルメされてはいるが共感を覚えると思う。
何十年も前にスタンダードナンバーになるようなヒット曲を飛ばし、その往年の栄光で食い繋いでいるスターは幾らでもいると思う。
主人公のダニー・コリンズもそんなスターの一人なのだが、そんな彼の所に43年遅れでジョン・レノンからの励ましの手紙が届く。
この一通の手紙によって、彼は遅まきながら音楽に対する愛、存在は知っていたのに放っていた落しだねの息子への愛、そして自分らしい生き方を取り戻す為、人生をやり直すことを決意する。
彼は息子に会う為、そして数十年振りに新曲を作る為、とあるホテルを根城に活動をスタートするが、長いブランクは様々なものを硬直させ、容易く物事は進まない。
そんな事態の打開策として彼が取った行動は如何にもロックスターらしい「愛の押し売り」。
この「愛の押し売り」を含め、愛情表現や生き方が不器用なダニーを、アル・パチーノが愛すべき人物としてユーモアたっぷりに演じる。
そして彼の滞在先のホテルのマネージャーで、人生の転機にいる彼を叱咤激励するメアリーをアネット・ベニングがキュートに演じていて魅力的だ。
ダニーのマネジャーとして、そして親友として陰になり日向になって支えるフランク役のクリストファー・プラマーが、人としての滋味が演技から滲み出ていて共感する。
この熟練のキャストたちによる演技とジョン・レノンの名曲によるハーモニーは心を揺さぶらずにはいられない。
果たしてダニーの第2の人生の行方は?
切っ掛けは人によって様々だと思うが、何歳になっても夢と人生を取り戻すのに遅いということはないし、諦めずにやり続ければ道は開けるということを本作は教えてくれる。