えいがドゥロヴァウ

エクス・マキナのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.2
日本公開がなかなか決まらないので
痺れを切らして海外版ブルーレイを購入
決め手はアリシア・ヴィキャンデルの存在だと思います
『コードネームU.N.C.L.E.』のギャビー役でノックアウトされてしまったので
ずっと観たいと思っていた気持ちがより一層強まり
Amazonさんで5180円でしたがポチッと買ってしまいました
インパルス

5180円の価値があったかどうかは分かりませんが、この映画の世界観はとても好きです

アリシアが演じるアンドロイドのエヴァは人間をあらゆる面でアップグレードした性質を持っていると言えます
人の微小な表情の変化や挙動から、その人の心理状況を分析、判定できる能力
卓越したコミュニケーションスキル(社交性)
そして滑らかで無駄がなく「人間らしすぎる」所作がとても美しくて(これはアリシアがバレエの経験を通じて身体操作に長けている賜物だそうです)
その美しさ故に不気味な印象をも与えるという二面性の絶妙な塩梅が、映画全体の世界観を構築する最も重要なエッセンスとなっています
いやぁますます惚れてしまいます、アリシア・ヴィキャンデル!
スウェーデン人のヴィッキャンデル!!

エヴァを開発した大手検索エンジン会社のCEOネイサンは、人工知能と人間の関係は人間と原始人のそれと等しいと説き
人工知能の開発が禁断の果実であることを承知しています
厭世的な側面を見せる彼は景勝を誇る広大な土地を所有し、そのなかの別荘に研究施設を設けて人工知能の開発とテストに明け暮れていますが
彼は彼自身をも凌駕するかもしれないアンドロイドを施設内の部屋に閉じ込めておくことによって、絶対的な優位性を維持しています
しかし本物の人工知能は、ネイサンを出し抜いてその優位性を崩すことによってこそ、その知性が本物であることを証明しうるのです
「ここから出してよ!」と喚き散らすようなアンドロイドは失敗作でしかありません
果たしてエヴァは「完璧」な「本物」の人工知能たりえるのか?
宿命的な親殺しの構図
この辺のアイロニーもすごく良いですね
ネイサンは同調し難いキャラクターですが、彼が飲んだくれている理由は分かるような気がします
彼は彼自身が求めているものが同時に彼を破滅させることを知り、それを怖れながらも突き進む狂気の天才なのではないでしょうか

ネイサン、エヴァ、そして施設に招かれた社員ケイレブ
人工知能の判定を行なうテューリングテストを軸に世俗から隔絶された環境で描かれる色情絡みな三つ巴の知恵比べ
人間は原始人に同情しない
結末はゾッとさせられます
『28日後…』や『わたしを離さないで』の脚本家アレックス・ガーランドが初監督を務めた本作は、とても良質なSFでありサスペンススリラーでありました

あ、ネイサンの使用人キョウコ(英語がまったく理解できない)も独特な雰囲気を醸していて良いアクセントになっています
ネイサンの部屋に飾られているジャクソン・ポロックの絵画も意味深長
そしてPortisheadのジェフ・バーロウによるデカダンスな音楽が素晴らしい!