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エクス・マキナのemeronのネタバレレビュー・内容・結末

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

まず普通に見ればケイレブは人間でエヴァに利用されたと見るのが大方の見方だろう。だがケイレブがAIであったという線がどうしても拭いきれない。チューリングテストとはそもそも人間かAIかわからないものを判断するものだからだ。

なによりエヴァの次期型は歴史を変えるものになるというネイサンの発言。このことについて劇中ではこれ以上なにも言及されない。ケイレブは血を流し、髭を剃り、酒に酔うことからしてどうやら生身の人間のようだ。しかし脳とウェットウェアを入れ替えたのかもしれない。そのタイミングはきっと両親を亡くしたという事故のときだろう。背中の傷跡からも確かにあったことだとわかる。身寄りがないのは利用するのに好都合だ。

ネイサンがエヴァを異性愛者に設定したと説明するときにケイレブに”君も異性愛者に設定されてるのと同様に”と言う。本当に設定したのをうっかり口を滑らせたとみることもできる。ケイレブが言おうとした名言を既に知っているのも製作者なら当然だ。
同様にエヴァがテストに失敗したら機能停止になるのか?という質問に続けて”ケイレブも失敗したら機能停止になるのか?”と聞く。ケイレブがAIであることに気づいているのかもしれない。

確実にネイサンが創ったアンドロイドは7体、クローゼットの5体とキョウコとエヴァ。監視カメラの映像の名前とバージョンと5体を照らし合わせてみると、
アンバー v0代、リリー(白人系)v1代、リリー(白人系)v2代、カティア(白人系)v3代、ジャスミン(黒人系)v4代、ジェイド(アジア系)v5代。ここからアンバーにはまだボディがなくリリーv1代で下半身、リリーv2代で全身、キョウコがv6代でエヴァがv7代と推測できる。リリーが2体いるのが少しややこしい。最終的にエヴァはジェイドと体を交換しリリーの服を着て外に出ていく。ジェイドの暴走によりキョウコは言葉を話さないほうが都合がいいと判断したのだろう。和食調理スキルとダンススキルはあるが、とにかく従順で感情を表に出さない。ダンスシーンはこの映画の気持ちのズレを端的に表している。ノリノリで踊るネイサンと無表情で完璧にシンクロして踊るキョウコ、その踊りをただ困惑して見るケイレブ。しかしキョウコに秘めた感情があるのは食事をこぼして怒られたあと廊下で落ち込んでいる描写からみてもわかる。自分から積極的にアンドロイドあることを見せてきたり、のちにエヴァを助けてくれることからみてもそうだ。(キョウコとエヴァの会話は特殊なAI同士の言語だろうか?)あとで包丁を扱いはネイサンに反抗する時に役に立つのだが。
ネイサンは性交渉ができる機能があると説明しているし、キョウコとの性交渉の描写もある。いわゆるセクサロイドとしての目的が大きい。これまでは全て女性型だった。ケイレブがAIだとすれば初の男性型でAI同士で恋愛はできるかという壮大な実験だったのかもしれない。ケイレブには好みの女性のタイプを設定しエヴァがどれくらい対応できるか、清楚系の地味子みたいな服がタイプだと判断したのだろう。見られているのをわかっていて服を脱いでいく、ケイレブはそれを見て(;゚д゚)ゴクリ… この場合服着てるほうが人間っぽい気がするのだが

「ブレードランナー」にデッカード=レプリカント説があったようにこの映画自体がチューリングテストつまりフォークト=カンプフ検査をしているようなものだ。

ちなみに終盤に施設の壁に映る絵画はクリムトの「マルガレーテ・ストンボロー=ヴィトゲンシュタインの肖像」で映画内の検索エンジンであるブルーブックに名前を引用された「青色本」の作者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの姉である。この本は自我だけが確実にあってその他はその認識にすぎないという考え方、唯我論についての哲学書だ。

ネイサンは近いうちAIは人間を原始人のようにして見るだろう、という、このことは自分自身に対して言っているのだろう。
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