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夢がしゃがんでいるのくりふのレビュー・感想・評価

夢がしゃがんでいる(2008年製作の映画)
3.0
【ねじ死気】

アマプラ見放題にて。村田朋泰の作風は、ミスチルのMVにも使われたパペットアニメが知られているかと。一方、本作はほぼ描画によるアニメで、作品履歴からは珍しいと思う。

ただ、展覧会で上映したものらしく、これがインスタレーションの一部だとしたら、単体で見せることをケアしないのは不親切でしょう。ただでさえ理解しづらい内容だからね。

イメージはそこそこ豊穣。ルーズで集中力のない人が『ねじ式』を描くとこうなる、みたいな。28分という時間の意図も不明。私は中途半端に感じました。

しゃがんでいる感覚は確かに、ある。飛翔や疾走がなく、ダラダラ歩くばかりだしね。

でも、夢とは睡眠中に、今日まで感覚器官が受け取ったものを、何処に整理して記憶させるか?という機械的な“脳作業”に過ぎないから、脈絡はないし物語もないんだよね。そこに意味づけするにはもっと脳科学が進まないと、わかってこないと思う。

夢を見た本人には実体験だから、そのままで面白いのだけど、他人には共有できる感覚がない。だから夢の描写は大概退屈で、そこにどう普遍性を仕込むかが、作り手の才かなあと。

私は、村田朋泰が何に、不安と心地よさを感じるか…へ寄り添うことに割り切りました。

昭和レトロを中心に、そこからあちこちはみ出してゆく世界観は楽しかった。駄菓子屋のような質感で、ちょこまか可愛いらしい。大人が描いた子供の絵みたいね。

でも、目の下にクマがある男はどうやら、身近な女児を失う経験をしており、彼女が夢の中では育って彼に、寄り添ってくるらしい。この辺り、怪談風のヒヤリがあります。

そんな死のイメージも横切るが、本物の死を知ろうとする覚悟はなさげ。映画は軽い。

あくまで30分後に覚める夢。幽体離脱気分の自己満足に思えます。

でも、映画は映画でしかないものね。しゃがんだ夢を見ることも、人生のひとあじ。

<2023.12.4記>
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