OASIS

神々のたそがれのOASISのレビュー・感想・評価

神々のたそがれ(2013年製作の映画)
3.2
地球より800年ほど発展が遅れたある惑星を調査するために30人の学者たちが派遣された。
しかしその惑星では文明の発展を拒むような圧政と虐殺、知識人たちの抹殺が繰り返されていたという話。
監督は「フルスタリョフ、車を!」のアレクセイ・ゲルマン。

な ん だ こ れ は !
全く話が入って来ないではないか。寧ろ分かり易いストーリーなどという無粋な物は無いのだろうか。
そこにあるのは、原型をとどめない屍肉と「ボトッ!」「ズルリ」と音を立てながら落ちて来る臓物、垂れ流された糞や尿が発酵し腐敗したガス、吐瀉物や唾・涎など饐えた匂いを放つ物ばかり。
そのまま見せられ続けているとスクリーンから漏れ出て来きそうな臭気が嘔吐感をもよおしそうになるが、モノクロの画面がそれをいくらか緩和させ、舞い散る灰や乱れ飛ぶ光の粒のように錯覚させる。

「フルスタリョフ、車を!」でもそうだったのだけど、話の流れが見え始めたかな?と一旦分かった気になっているとまたそこからどんどん引き離されて、結局は何の話だったのか全く理解出来ないまま終わるというのが辛い。
観る人の知能レベルを試すというか、深く観ようとすればするほどその凝視をヒラリと交わしてアッカンベーをして来るような。
馬鹿にしているというよりかはリトマス試験紙的なある種の見極めをされているかのような感覚だった。
全く心に触れない場合だと、それこそ拷問に近い苦痛を2時間50分の間受け続けているようなものだ。

実際何がなんだかチンプンカンプン過ぎてストーリーも最初の方しか覚えていない。
処刑人ドン・レバとその分隊である灰色隊が殺戮の限りを繰り広げる姿を、生き残りの知識人を匿おうとする地球からやって来た学者ルマータがどうしようも無く傍観している。
そこからドン・レバが自ら独立し王権を獲得する為灰色隊と敵対して行き、裏切りやナンダカンダあって「一国の王になる=神になるのはつらいよ」とポロリとこぼしてしまうという流れでいいのだろうか。
そういう事でいうなら「神々のたそがれ」よりも「神さまはつらいよ」という寅さん的な原題の方がしっくり来るとは思うのだが。

ドン・レバ以外のキャラクターが誰か誰だか頭の中で全然相関図が描けないままで終わってしまったのだが、これはたぶん画面の中で誰かが台詞を言っている間も画面外から楽器やら奇声やらが激しく飛び交い、剰え街頭インタビューのようにカメラの前を行き来したり唾を吐きかけてきたりと、とにかく全員が全員忙しなく動き回っているという事によると思う。
終始そんな調子だから、観終わった後は心身共に疲労感が襲って来た。
たぶん内面的には800歳くらい年をとってるんじゃないだろうか。

屍体から噴き出たウンコを別の屍体の口に入れようとしたり、腸をブラブラと持ったまま歩き回る少年がその場に似つかわしくない陽気さを振り撒いていて逆に怖かった。

@シネ・ヌーヴォ
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