Tomofilo

THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦のTomofiloのレビュー・感想・評価

2.5
やっぱり押井さんはアニメ映画の人なのかなというのが見終わったあとの最初の感想だ。

アニメという虚構の中で更に虚構の世界を描くことで、アニメという虚構の枠に実態性を持たせる二重構造が押井監督の手法だと思っていて、だからこそその虚構における実態性が逆説的にリアリティを持たせてくれたことで映画への没入感を作ってくれたのだが、"AVALON"にしてもこの"TNG"にしても、その根底となる"実写映画"という虚構フレームの使い方が不十分なので、過去の押井作品にみられた重たさが出せていないのでないかという気がする。
アニメにおいては、アニメだからこその制限の中で、登場人物の瞬きの有無や動きの硬軟、肌の色の表現や顔のシワの書き方などでリアルさを出したり、逆に入念なロケハンから得た地理的な情報を元にアニメ(CG)ならではの情報量を増強することで重層性を獲得してきているのが押井作品の特徴のひとつだった。
しかしこと実写作品においては当然のことながらそれらのアニメ技術を駆使することが出来ず、それによって押井映画を押井映画たらしめていたキーポイントが失われてしまっており、逆に押井監督の中に実写における俳優への演出指導や実写撮影のノウハウがない(少ない)ことで、実写映画としての深みがないために妙に平面的な印象で終わってしまっている、という感じだ。
"AVALON"はそれでもまだ、"虚構性"に意識が向いていたがために、あえてゲーム的な無機質感を出そうと過度な感情的演技を廃したり画面の色合いをコーティングしていたことで"アニメ的手法"の効果を出せていたように思うが、この"TNG"は『見たまんま』感を出そうとしすぎたが故に虚構性も実態性も共に半端になってしまっている。
またさらに、アニメ版"パトレイバー"の影響を公言している"踊る大捜査線"的なテイストをなぜか逆に本家が踏襲してしまったが故にチープさが増してしまったのは皮肉だろう。
P2と地続きであることを匂わせていたのに何故かパロディ作品めいた登場人物の名前、またP2と同じ構図や台詞回しも、自虐ネタかと思うくらい必然性がなく、脚本や設定に説得力がないのも、この作品を中途半端たらしめたいるように思う。
パラレルにするならする、地続きにするならするで、もっとやりようがあったはずだが、たぶん興行的な不安が拭えなかったがゆえに、どっちつかずになってしまったのではないか。
理不尽なほど原作をアレンジしつつも、有無を言わせない圧倒的な世界観と映像で再構築するのが押井さんの真骨頂だと思うのだが、、、。

P1、P2、GIS、イノセンスと後世や後進に大きな影響を与えた傑作を4つも生み出している、僕も好きな監督の一人なのであまり悪くは言いたくないが、これらの作品に匹敵する衝撃を与える作品を作れるだけの熱量がもうご本人にはないのではないだろうか。
ガンダムや攻殻機動隊みたいに優れたスピンオフや派生作品を作れる優秀な若手がパト回数にも出てきて欲しいです。
Tomofilo

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