マクガフィン

ブラックパンサーのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
3.3
国王とヒーローの2つの顔を持つ男を描くアクション映画。

一見、相反するような世界最先端の超ハイテク国と伝統文化を色濃く組み合わせた設定は、冒頭の超自然的と形而下的なスーパーヒーローが結びつけた説話な手法が神話的要素を醸し出す設定が良い。また、軍事力やテクノロジー的な後進国であるアフリカの視点が超先進国に逆転する演出が秀逸で、先進国と後進国の疑似的視感体験にもなり、全編通しても神話の秘密継承と現実社会の狭間で揺れるプロットは世界的事変に昇華する。

ジャンベの儀式的で軽妙な高音が王位継承の格闘の鼓動を高めたり、民族衣装やアフリカ風伝統模様がハイテクの中に人間味がある視点を醸成する。

ブラックパンサーとカーチェイスを縦横無尽で疾走感あるアクションは見応え十分で爽快だが、ブラックパンサー同志の戦いは、暗い背景に漆黒スーツで違いが分かりにくいのが残念。映像が分かりにくい夜間のアクションシーンが減っていくトレンドとは真逆な演出にビックリする。

国王とブラックパンサーの2つの使命と同時に、自国優先のモンロー主義的な秘密保守主義と技術と資源を世界共有する人類平和の選択の葛藤を、其々の戦いや出来事を通して、対象や多様の心情を察する王や超権力者としての成長譚にも。傍観主義からの脱却は後進国やマイノリティの理解だけではなく、それより先の共生や融和による未来開拓による報復の連鎖を断つ提示は、2者一択のような単純な問題でないので共感できないが、長いスパンで子供教育の支援センター作るのは正しいのではないだろうか。(後進国ではなくアメリカに作るのは如何ともだが)

同じ種族でも生活環境の違いによる思惑の対比、地位や立場による責任の違いをアクションを挟みながら、アメリカの戦前時代にいるような選択の岐路にいる背景は面白かったが、後継ぎが男限定で腕力で優劣を決める国王継承制度の違和感や、ハーブさえあればブラックパンサーは幾らでも誕生できる疑問は映画内で自己解決できなかった。