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ブラックパンサーのSIのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
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2018.3.21
TOHO六本木ヒルズにて鑑賞

最近最早飽きてきた感のあるマーベル映画。
昔からカプコンの格ゲーで親しんだりとマーベルが大好きな家庭なので、初期の「X-MEN」や「ブレイド」辺りは「ウルヴァリンかっこよすぎる!!」と大興奮して観に連れていってもらったが、近年あまりに作り過ぎである。
またか、と思いつつ惰性で家族で観に行く。この作品も同様だった。

ブラックパンサー自体がマーベル初の黒人ヒーローであるために題材が社会的問題提起を孕むのは当然であり、その辺りを上手く描けているのか少し気になっていたが、想像以上に酷かった。
ブラックパンサーは原始的文化と未来技術を併せ持つ匡、ワカンダの国王なのだが、一番イラッとしたのが「みんなのアフリカ像」を適当にかき集めて匡を描いていること。全ての描写がひどく浅い。ムルシ族を完全にパクったキャラがいたり、着ている民族衣装はドキュメンタリーやらなにやらどこかで見たような景色ばかりで、全くワクワクしない。ワクワクしない上に、これは異文化のその深さを自分たちの文化と同じように尊重する姿勢ではなく、ただ奇異なものとして表層的に消費する姿勢に感じられる。監督は黒人ということだが、正直ひどくがっかりした。マーベル映画ながら自分のアイデンティティと結びつき稀有な作品になっていた可能性は十分にあったはずだ。
第一、これは余談ながら、そもそも原始的文化と科学技術の発達は共存するのだろうか。レヴィストロースの「熱い社会」と「冷たい社会」という理念型を思い出せば答えは自明である。カオスをデコードすることなく一定のサンス<意味=方向>が生まれる事は無いのではなかったか。

VFXは今までのマーベル映画同様で目新しさは特に感じられなかったが、宣材にもなっている韓国でのチェイスシーンは良かった。無人で遠隔操縦された車の上に乗りチェイスするその様はかなり新鮮である。
また、国王が代わり革命が起こされた後の、上下倒立したFIXから次第にカメラが回転し180°で元に戻る、天地転覆を示唆するカットも良かった。
一番最後のクレジットシークエンスのVFXもかなり好きだった。Kendrick
Lamarの「All The Stars」が流れるなかリズムで粒子が跳ねるあの様、あの映像感覚を何故もっと本編の映像に活かせなかったのか。全体としてリズム感が失われてしまっていて、鑑賞していて正直辛い。

鑑賞後、アフリカではなく韓国に行きたくなってしまうという、惜しい、惜しすぎる作品。
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