そーた

キャプテン・マーベルのそーたのレビュー・感想・評価

キャプテン・マーベル(2019年製作の映画)
4.0
映画が娯楽であることの醍醐味

仕事のせいにはしたくはないけれど、仕事の充実度と反比例するかのように
映画鑑賞の頻度が激減してしまったことが切ない今日この頃。

もはや映画の存在を忘れかけてしまってた僕にとって、マーベルがセットした目覚まし時計の音はけたたましかった。

アベンジャーズにとってのXデーが目前に迫るこのタイミングで、ヒーロー物の新たなアイコンになるであろうキャプテン・マーベルの単独作。
迫り来るブロックバスタームービーの宣伝の一環であるのは重々承知だけれど、
まんまとそれに乗せられて見るのに躊躇はいらない。

MCUが信頼に足るコンテンツだという事は疑う余地はないし、それは過去の実績が物語っている。

アイアンマンから始まるMCUの歴史に大きな転換をもたらしたアベンジャーズ。
その原点にスポットを当てた、サスペンステイストのヒーロー映画には、反骨心剥き出しの娯楽性がギッシリ詰まっていた。

やはり注目なのは、随所に感じる90年代グランジ・オルタナ系のエッセンス。
それらの音楽が持つ歪んだ反骨心を、
感じるままに主人公ヴァースへ託したくなってしまうほどに、
そう、彼女の魅力が炸裂していた。

男性社会での立ち位置に抗う彼女が、あの均整のとれたプロポーションでもって、ナイン・インチ・ネイルズTシャツを着こなしてしまうのだから、
はみだし者なヒーローのモデルとしては反論の余地なく模範的だ。

ここまで語ったところで、
実は僕自身、彼女の攻撃対象なんだと言うことに気付いてしまう。

少なからずグランジ・オルタナと呼ばれる音楽に世話になった僕が、
劇中で反応できた音楽ネタの全てが男性ボーカルだったという事実。

ナイン・インチ・ネイルズ、スマッシング・パンプキンズ、ニルヴァーナ、、、

しかし、ここぞと言う場面で流れるのはノー・ダウトやガービッジなどの女性ボーカルなバンド達。

そして、それらは僕が聞いてこなかったバンドでもある。

女性ボーカルが嫌いなわけではなく、
ただ、オルタナのボーカルは男性だという固定観念を当時抱いていたのは確か。
なんだか恥ずかしくなってしまう。

僕の音楽に対するそんなスタンスこそ、ヴァースの記憶の断片に抗うべき対象として刻まれたものに違いない。

だからこそ、
僕が無視をしていた女性ボーカルバンドの曲をバックに戦う、
ヒーロー然とした彼女の姿にとことん魅了されてしまったということ自体、
この映画の成功の証。

一世代前のバットマンなどでディストピアな雰囲気作りの手助けに90年代のロックを利用したDCコミックと比べ、
主人公の生き様を表現する比喩として反主流的音楽をフィーチャーしたマーベルはやはり一歩先を行く。

そんな貫禄を見せつけられれば、
エンドゲームの出来を心配する必要は皆無。

もうじき再開するサノスとの激しい戦いにおいて、何よりもキャプテン・マーベルに対する期待値がはね上がったことが、
今回の単独作品の最大の功績だろう。

そうそう彼女、
時間を操れるとかなんとか言われているけれど、
だったら、
サノス戦が終わったらでいい、
薄くなったジュード・ロウの髪を元に戻してあげてほしい。
そーた

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