ひでG

スポットライト 世紀のスクープのひでGのレビュー・感想・評価

3.9
映画をチョイスする際に、先入観に支配されることがよくある。「アカデミー作品賞で教会の虐待事件をスクープした新聞記事の話」。
なるほど・・良作なんだろうな、
デスクと新聞社のお偉いさんの激しく口論「報道はかくあるべき!」的な演説。
被害者の涙の訴え
寝室に石、割れるガラス。怯える記者の家族・・・なんて描写を思い浮かべるよね。

確かに良作だけど、あんまり気が乗らなかったのも事実。

しかし、本作はそういう予想とは少々違っていた。
まあ、上記のようなシーンはないことはないけど、まあ、一言で言えば、とても「ジャーナリスティックな作品」で、定番の感動や涙頂戴的な展開はしてこない。

ボストンという中都市で歴史的にも町の中心的な存在でだった教会の不正を暴くのだから、上記のようなジャーナリストの熱気や妨害活動なども当然描かれているが、必要以上に強調してこない。
しかし、むしろオーバーに描かないことで、それらを逆に観客に的確に届けることに成功している。
ラスト近くの数カットに普通の映画だったら長々ながしてしまうであろう、この事件に付随している様々な問題を実にシャープに提示しているところなど見事である。

これは映画のできなどとは違うが、本作を観て、ジャーナリストのあるべき姿を学んだ気がする。
彼らは決して諦めないし、ひるまない、さりとて偉ぶることとしない。劇中で激昂するシーンはごく僅か。【マイケルキートンは怒ったっけ?】
そして、事件の本質にある組織としての罪を追及しているところ。

この二点は、現在のマスコミも大いにこの映画で学んだり刺激を受けたりしてほしい。
体制側にすり寄り、事件や社会問題を矮小化してしまいがちな今のこの国のジャーナリストの皆さん、どう観たんだろうか。

マイケルキートンは実にいいね。「バードマン」で嫌いになったけど、これでまた好きになった。
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