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ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 第1作目『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では若きニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)が堂々たる主役を演じていたが、第2作目『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でのアルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)の登場により、ニュートの活躍が大人しくなったのは否めない。今作も監督のデヴィッド・イェーツと原作者で脚本家のJ・K・ローリングも主人公のニュート・スキャマンダーよりも、明らかにアルバス・ダンブルドアの心の葛藤の方に主眼を置く。聡明で誰よりも強い魔力を持つアルバス・ダンブルドアだが、戦争に至るかもしれないゲラート・グリンデルバルド(マッツ・ミケルセン)の侵攻を防ぐことが出来ない。今作では因縁深きゲラート・グリンデルバルドとの関係性が明らかになるばかりか、メンターと弟子の間柄とも言えるニュート・スキャマンダーや彼の兄のテセウス・スキャマンダー(カラム・ターナー)ともよくよく話し合い、彼らに歩くべき道すら指し示すのだ。

 2作目は魔法や人間vs魔法使いの対立というよりもニュートを除く各キャラクターの血筋の話を図式的に描こうとしたため、ともすれば『スター・ウォーズ』シリーズの二の舞じゃないかと軽く揶揄したのだが、デヴィッド・イェーツはコロナまでのおよそ2年の間に各キャラクターの関係性を解き解しながら、煮詰めるべきところは煮詰め、間引くところは間引いている。実際に2作目でクリーデンスにご執心だったナギは出て来ないし、前作で懸案事項だったと思われるユスフ・カーマ(ウィリアム・ナディラム)の血筋の挿話もあえて深追いしないことが吉と出ている。前作の闇堕ちのインパクトはあまりにも衝撃的で、公開時から賛否両論渦巻いたのは承知しているが、その1番の悲劇は1でコメディ・リリーフ的な立場だったジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)を2のクライマックスでは悲劇の人にしてしまったことに尽きる。そのため3でも1同様のコメディ的な場面はあるにはあるが、ハリポタ世代からすれば笑ったら良いのかそれとも悲しんだら良いのかどうしたら良いのか皆目わからなかったのが正直な気持ちだ。今回はそのコワルスキーに抱く我々ファンの微妙な感情にケリをつけた時点で、ようやく前に進めると言った印象だ。

 一方で2では地に足の着かない危なっかしさばかりが目立ったニュート・スキャマンダーの成長という側面で言えば、多少の物足りなさが残るのも事実だ。あの人の出演時間が極端に少なかったので彼を物語の中心で最前線に置くのは難しかったかもしれない。コミカルなカニ歩きの抜群の面白さもあるにはあったが、それはあくまで外側に見える部分の話で、主人公の内面の葛藤はシリーズ3作の中で1番薄めで、そんなに悩まずサクサク行動するのがエディ・レッドメインの姿がファンからすればやや物足りない。まったく生き方の違う兄弟との葛藤も今作ではむしろアルバスとアバーフォース(リチャード・コイル)とのやり取りの方が密で、ニュート・スキャマンダーの物語とは言い切れない。然しながらピケットとテディの丁々発止のやりとりあり、また『ハリー・ポッター』シリーズとリンクするような懐かしい場面もあり、昔からのハリポタ世代は文句なく嬉しい。静かになり兼ねないキリンの挿話も魔法使いとしての道義的・道徳的思想の点で言えば普遍的な魅力を讃えている。何よりジョニー・デップの前作のイメージもあり、身構えながら見守ったマッツ・ミケルセンの冷酷さと相反する狼狽とが、ジュード・ロウと対峙した際の人間ドラマに深い彩りを与えている。ただ今作の物語は1や2ほどはほとんど進んでいないのも事実で、一説には5部作とも言われる今シリーズの箸休め的な内容と言えるのかもしれない。
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