尿道流れ者

ワイルドカードの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

ワイルドカード(2014年製作の映画)
3.8
コーヒーに落ちた一滴のミルクのような淡い映画。味にも見た目にも影響の出ない一滴だが、それが落ちる瞬間を観た者は、黒のなかに白く滲んでいく光景を覚えている。はっきりとしたものではない。言われなければ思い出せないし、特に話題に上がるようなものではない。それでも、思い出せば安心とか微笑みをもたらしてくれるような類のアレ。

その腕っぷしの強さと、占い師なら誰でも手をかざして未来でも覗きたくなるスピリチュアルな形状の頭には、傷のない玉という本来の意味を込めて、完璧という言葉で表したくなるステイサム兄さん。今回はギャンブル依存症というなんか見た目にしっくりくる弱みなどを抱えつつどこか頼りない感じがあるが、結局は強い用心棒という役。

ラスベガスに生きる一人の用心棒。広い世界のちっぽけな存在。そんな男に訪れる戦いもやはり小さなもので、街に及ぼす影響なんて一時的で小さなもの。それでも、一人の人間には一大事で、夢なんか意識してみたり、人生を変えたりするきっかけになる。映画としては小さいが、観ている人には等身大なのかもしれない。


「なんか分かるよ」と話しかけながら、心の中でステイサム兄さんの頭にニベアを塗ってあげた。