尿道流れ者

スペシャルID 特殊身分の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

スペシャルID 特殊身分(2013年製作の映画)
3.0
どうしようもなくダサいタイトルにふさわしく穴だらけで寒気のするストーリーと演出。観てしまったら最期、自分の選択と時間の使い方を後悔する以外にない。しかし、カンフーアクションなんてものは言わばアイドル映画のようなもので、いかに大好きなあの人が活躍するか、カッコ良いか、可愛いかが問題点で、そこさえ満たしてくれていれば言うことは何もない。その点でも偉大なるドニー・イェンはこの映画ではアイドルになりきれず、失敗作というしかない。
この映画のアイドルはジン・ティエンで、少々雑な扱いにもめげず、常盤貴子を思わせる美しすぎる彼女が長い手足を武器に、大開脚などのおかずを観客に提供しながら、おかずとしておかずらしいアイドルとして見事に君臨する。真面目で厳しい女警官でありながら、キティちゃんが好きという糞みたいな設定を見事に物にして躍動の限りを尽くし、ジャッキーさながらのスタントまで見せるなど心と股間を鷲掴みにしてくれる。

ドニー映画としては冒頭の数分とクライマックスの数分しか機能していない。柔術を取り入れたそれらの数分のアクションはとても素晴らしく、冒頭の時点では今年観た映画の中でも最高に面白いものだった。しかし、そこからの展開は酷いありさまで、昨今のカンフー映画やアクション映画が避けていた灰汁になる部分のみで構成したかのような苦笑せずにはいられないありさま。師弟の闘いなどキャラクター同士の関係が物を言うような話でありながらも、キャラクターの設定やエピソードには深入りせず、触れ方も極まったダサい手法をとるなど、物語のカタルシスを作り出す方法としては極めてアバンギャルドとも言える形をとる。

ガッカリと言えばそれまでの作品だが、もはやコントともとれる典型的な物語展開と演出にコメディ映画だと錯覚させられ、そうなってしまえば全てが逆に楽しめるようになる。ところどころ現れる笑うしかない場面が徐々にツボに入り、スタッフロールに流れる曲が絶妙に寸足らずというまさしくアバンギャルドなボケに笑いを堪えるなんて努力は水の泡と化す。

ドニー先生が空高く飛び上がるイメージ映像なんて牧歌的で何か平和の象徴として崇めたくなるような何かがあった。アクションだけは流石に超一級品なので、好きなら観るしかない。逆にそのアクションのキレが笑いどころに変わる危険性もあるが。