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日本のいちばん長い日のALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

松竹、アスミックエース共同配給作品。原田眞人監督、脚本。本当はもっと前に鑑賞したが、終戦の日に合わせて投稿。
日本がポツダム宣言を受諾する終戦間際の出来事を描いた半藤一利の同名小説の映画版。同名として1967年、岡本喜八監督作品のものがある。
冒頭から畳み掛けるようなスピーディーな展開をみせ、長セリフ、多カットなど、意識して観ないと置いて行かれるような演出になっている。ハリウッド育ちの原田監督らしく、英題:Emperor In Augustと監督自身で付けるほど、海外上映を意識している箇所が随所に見受けられる。
1945年の日本。日本はポツダム宣言を突きつけられ、大本営は揺らいでいた。戦争継続派と和平派、彼らはことあるごとに対立するが、戦争終結は目前に迫っていた。東京大空襲、広島、長崎への原子爆弾投下、そしてソ連の対日参戦。まさしく映画の展開の通り、畳み掛けるように連合軍からの攻撃を受けていた。首都は焼け野原、軍需工場がある大都市は壊滅、そして迫る本土決戦の時。陸軍大臣の阿南も、首相である鈴木貫太郎も、そして天皇陛下も敗戦は避けられないものとして戦後を見据えていた。ポツダム宣言を受けて巻き起こる内部分裂、クーデター、自決、御聖断、玉音放送。
本作は、あくまで史実を元にしたフィクションであるという一番基本的で一番大事なことを頭に入れつつ観るべきであるが、観客全員がそうとはいかない。本来であれば観客側のリテラシーの問題であるはずだが、最近ではそれが作り手側に委ねられている。この映画の公開は、また観客や批評家らの間で論争にはなるだろう。
同名他作品と比較するのは自分としてはあまりしたくないのだが、岡本喜八監督版が軍部を俯瞰的な位置から客観視していたのに対して、原田眞人監督版は陸軍、もっと言えば阿南陸軍大臣を物語の主人公として据えて観客の目線を物語の中に落とし込んでいる構造となっている。そして本作の最も大きな特徴として挙げられるのが、昭和天皇を写したことだ。正確に言うと昭和天皇を演じる本木雅弘だが、これは太平洋戦争、終戦が歴史上の出来事として過去となった、つまり太平洋戦争を描くことはもはや「時代劇」となったという現状を悟った。
終戦から70年となった今日。多くのインターネット、テレビ、新聞等各種メディアは改めて太平洋戦争を取り上げ、現在を分析し、将来を見据えた。それから今を担う映画監督達がこの節目の年に映画を通じて日本がかつて軍隊を持って戦争をしていたという事実、そして戦争という暴力そのものについて振り返り、真実を見つめ、より良い未来へと進む手立てを彼らなりに指し示している。やがて訪れる戦後100年の年。今、映画業界に入りたての僕らはその頃には業界の第一線を行く担い手となっている。その頃に先の大戦をどう解釈し、見解を表すか。今のうちから考えておかねばならない。
本作品は映画としては、好きかどうかと聞かれれば、あまり好きではなかった。詰め込んだような速い展開に、劇的展開を組み込んだ余分な演出、耳に悪い不快な爆音。最近の映画は本当に違和感を多分に感じる入り込めない映画体験をすることが多い。どうやってそうなったといった基本的な部分よりも、劇展開を重視して、セリフで説明する。非常に軽薄な内容だと感じてしまった。ただ本作が自らの考えを持つことの重要性に気がつくきっかけとなるのであれば、多いに価値のある作品と言える。
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