コタロー

シチズンフォー スノーデンの暴露のコタローのレビュー・感想・評価

3.2
最高の政治サスペンスSFスリラーと言いたいところだが、これがドキュメンタリー映画で現実に起きていること(スノーデンをどこまで信用していいのかは分からないが)だということが何より恐ろしい。
どこか消費しきれない、してはいけない、怖がることも正解なのか分からない不気味さに現実逃避がしたいというのが見終わってすぐに感じた素直な感想だ。

この世界に生きるすべての人に関わる「国家による国民の監視」、「主権はどこにあるのか」という構造的問題を真っ当に真実から何ひとつそらさず描く。その中で当事者たちのその憔悴し切った姿や逆に記者たちの活力みなぎる姿からヒューマンドラマが垣間見えてくる。これがドキュメンタリー映画の面白さなのだと再確認。

そういう意味で人と人の繋がり、ヒューマンドラマを通して社会の構造的な問題を匂わす映画が増えすぎた現代にひとつカウンターを食らわす作品でもあると思う。

「マスコミ(メディア)は人格に焦点を当てすぎる、論点をずらされたくない」

これは作中にスノーデンが発した言葉だが、ヒューマンドラマを通して社会問題を伝える作風の映画にも同じことが言えよう。もちろん、表現や伝え方は様々あっていいんだけども。伝えたいこと、表層化する構造的な問題を誤魔化すなよとはやはり思う。

そして、このような作風の作品が万人受けする大衆映画として普及するわけがないので、そりゃ誰も作りたがらないなとも思うわけである。

最後に、本題である「権力による監視」だが、この日本でも国家秘密保護法なるものを与党が成立させようとしている。
また、スノーデン事件が起こってから10年経っても、マイナンバー制度の導入やインターネット上の言論規制は激しくなるばかりで、管理社会、監視社会は止まらない。
当事者はやはり我々なのである。
そろそろ我々も論点をずらさずに考えないといけないのでは?
コタロー

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